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雑多なアルファベット / エドワード・ゴーリー
[柴田元幸 訳] 今までと違う文庫サイズほどの小型本です。 開いてみてびっくり。 絵ちっさ! ってそれもそのはず、初版はマッチ箱より更に一回り小さいくらいの豆本として刊行されたのだそうです。 その後の普及版で本の型の方は一般的な大きさになって、絵の方は原書そのままに保持されているというわけ。 400部限定だった初版本のうち、なんと100部はゴーリー自身が白黒の線画に色を塗ったカラー版。 本書の表紙を飾る豆本は何気にそのプレミアムなカラー版w ゴーリー作品コレクターの濱中利信さん所蔵の本物の写しなんですって。 なるほど洋書の表紙を見に行ったら絵の色が違った! あちらはまた別のコレクターさんのカラー版なんだろうな。 ゴーリーの並々ならぬ造本愛がひときわ発揮されている作品ではないでしょうか。
内容はというと、ゴーリーの十八番アルファベット・ブックの一冊です。 ヴィクトリア朝教訓をほどよくパロディにしているらしい。 元ネタに全く明るくないのだけど、やはり短い二行連句の定型押韻詩風なのか、アルファベット学習風なのか・・ 軽やかなリズムに乗って訥々と真面目に子供たちを啓蒙してるような感じなのかなぁと想像してみる。 それがひとたびゴーリーの手にかかると・・フフフ。 格言もどき系、感慨系、クスッと系、ちょっと不気味系、それがどうした系、まったくもって意味不明系などなど。 無防備に無造作にナンセンスでシュールな場面がぽんって差し出されてる感じなんだけど、言葉はめちゃめちゃ緻密に練られてるのだから不思議。 このABC順の単語って、どうも韻ありきでチョイスしてそうなんですよねぇ^^ 意味や無意味と交わって広がるシチュエーションは後からついてきてるみたいな・・
原題は「The Eclectic Abecedarium」です。 Abecedariumはラテン語由来の古い単語で、英語式に読むと“エイビーシーデアリアム”となり、全体を訳すと“折衷的なアルファベット・ブック”となる。 古くは版画と飾りアルファベットがコラボしたゴージャスな本が作られていたみたいな共通理解が恐らく西洋にはあるんだろうなと思う。 Abecedariumには、物々しく華美な中世風の装飾本を連想させる響きがあるらしく、(ヴィクトリア朝だけではなく)微妙に中世の装飾本のパロディにもなっているっぽい。
訳は今回、一つの型を踏襲していません。 ことわざ調、語呂合わせ調、七五調、有名なフレーズの捩り調など、多彩で雑駁でありつつも、それでいて奇妙な統一感をみせるパフォーマンス。 いつもほど神経質な肌触りはなく、若干ヘタウマ的な可愛らしさを滲ませているスタンプチックな絵ともいい親和力。 辿々しく意味を理解できたとしても、原文が醸し出す世界観のすべてが理解できるわけではないのが現実ですが、でもその一方で、柴田元幸さんが韻文訳の難しさを踏み越えようと創意工夫されるその現場をつぶさに見せてもらえることが、もはやゴーリーを読む楽しみの一部になっているかも。


雑多なアルファベット
エドワード ゴーリー
河出書房新社 2003-02 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★
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