猫のムトンさま / アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ
[黒木実 訳][ピエール・アレシンスキー 挿画] フランスの耽美幻想譚の名手マンディアルグの処女作、の可能性もあるらしい初期作品。 没後に忽然と現れた幻の中篇。 アンゴラ種の美麗な巨猫、ムッシュー・ムトンを妄愛し、主に仕える聖女のような献身を捧げる老嬢テレーズの、その身を苛む情熱、とてつもない喜びと大いなる苦悩の物語。 “ムトン”なる名前には神の子イエスへの目配せがありそうですが、羊どころか真逆をいく獅子のように獣チックな小悪魔、それがムトンさまなのです。
おとぎ話の中に転がり込んでしまったような古い教会のある小さな田舎町の旧世界的な情景。 牧歌的で退屈な、類型が類型として社会に生きていた時代の由緒正しさを彷彿させる戯画的舞台で、敬虔な異端が優雅でグロテスクな官能を迸らせています。 残酷な愛と狂気の滑稽劇のようでありながら、ラスト一気にエロスからタナトスへと転調し、昏い輝きを秘めた茫々たる死の匂いに凌駕されて陶然となってしまいました。
華美で繊細な装飾描写の綴れ織りのごときヴィジョンに溺れてしまいそうでしたが、これはマンディアルグ作品全般にみられる特徴でもあるみたい。 はぁー、もっと読みたい。 あと、翻訳の雰囲気が素敵。 城邑(まち)って読ませるの初めて知った。 挿画もいい! もうね、この絵のムトンさましかあり得ないw


猫のムトンさま
アンドレ ピエール ド マンディアルグ
ペヨトル工房 1998-01 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★★
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