チャンティクリアときつね / バーバラ・クーニー 文/絵
[ジェフリー・チョーサー 原作][平野敬一 訳] イギリス中世の農家を舞台にした動物寓話。 悪賢いきつねと気位の高いおんどりの知恵比べのお話です。 英国で昔から親しまれてきた民話だそうです。 子供向けの昔話って味気なく感じてしまうこともあるんだけど、素敵な絵とともに一話をじっくり読むのは心の保養になるなぁと、新たな発見がありました。
黒を引き立て黒に引き立てられる原色系の少ない色遣いが独特の味わいを醸し出しています。 クーニーは友人からニワトリを借り受け、観察しながら描いたそうで、その精密さと晴れやかさは、どことなく若冲を思わせるものがあります。 ページの端の飾り絵が中世らしさをそれとなく引き立ててくれていたかもしれない。
原作は、十四世紀イギリスの詩人チョーサーの手になる叙事詩「カンタベリー物語」中の「修道女につきそう司祭の話」だそうです。 つまり“司祭が語った話”ということですね。
藁葺き屋根の小さな一軒家、父親を亡くした母娘三人の慎ましい暮し向き、普段の服装、家畜や薬草畑やミツバチの巣箱・・ 当時の雰囲気を忠実に伝えることに心血を注いで絵を描かれたそうなので、どうなんだろう、文の方も韻文詩を現代の散文に書き改めた際、子供向けに整えた部分はあったにしろ、ほとんど潤色を施してはいないのだろうと察せられる素朴さがあります。
きつねと家禽の知恵比べモチーフは「マザー・グース」にも類例があるらしいです。 そして北欧にも非常によく似た「おんどりときつね」という類話があるのを知ってるんですが、 物語の完成度としてはこちらの方が整っています。 チョーサー版は北欧型の前半部に、イソップ物語やラ・フォンテーヌの「カラスとキツネ」パターンを継ぎ足したようなイメージかな。
やられてやり返しての二段構えのストーリーの、前半が“目を閉じる(大事なことを見ない)”、後半が“口を開ける(余計なことを喋る)”と、どちらも“うっかりおだてに乗って”しまっての失敗談と、そこから導き出される教訓が対を成し、綺麗に照応しているのが見事なのです。


チャンティクリアときつね
バーバラ クーニー
ほるぷ出版 1975-10 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★

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