夢巻 / 田丸雅智
星新一、江坂遊の系譜に連なる新時代ショートショートの旗手として注目されている作家さん。 初作品集ということもあって筆が若いです。 でも、ここからどんな風にグレードアップしていくのかなってのはちょっと気になります。
オフビートでキレッキレな感じを想像していた自分の好みとは違ったんだけど、いや、確かにそういう要素もあるんだけど、どちらかというとロマンあり、郷愁あり・・ みたいな叙情性優位な方向かな。 アイデアストーリーの“アイデア”はいいもの持ってる感が伝わってきて、このシュール&ナンセンスの連打はとっても楽しかったです。 ただ“ストーリー”が物足りないのは如何ともし難く。 オチにさほど重きを置かないポリシーなのかもだけど、いきなりショートショートのオチなし余韻ものはハードル高かろうに。 頑張って欲しいけど。 洒落た不思議な世界観を味わう奇想集といった趣きだったと思う。
「蜻蛉玉」「綿雲堂」「岬守り」「星を探して」「夢巻」などの優美な感動系ファンタジーよりも、「妻の力」「大根侍」「白メガネの男」辺りに食指が動きました。 「妻の力」は、いわゆる“ダラ奥”に依存してしまう夫心理を星の一生や宇宙の成り立ちに託けて描いてるのだけど、これが結構なるほど感あって良かったのだ^^; 剣士の仇討ちストーリーの定型を踏みながら、肝心の刀が大根という「大根侍」は、こちら側の住人とあちら側の住人との間の論点のズレ、噛み合わない会話が可笑しみを誘う系で、この“刀と大根”のように有機物と無機物、あるいは違う素材同士を混同することで生じるチグハグさの趣向はかなり多かったと思う。 こちら側の住人があちら側の立派な伝道師になってしまう展開のしらばっくれたユーモア感覚が「大根侍」は絶妙だった。 「白メガネの男」は、ニヤッとしたくなるようなブラックユーモアがそこはかとなく漂うところが好き。
あとがきでも触れておられた通り、日常のあるあるネタやふとした疑問に触発されたと見受けられる作品が多いです。 リモコンっていつもなくなるよな・・は「リモコン」へ。 これ、ラストのオマケみたいな謎かけ問答ネタにクスッとなりました。 寝ぼけた時のミミズののたくったような字って奇妙だよな・・は「みみずの大地」へ。 これ、落語の「あたま山」チックなオチが悪くなかった。 飲み会終わった出入り口付近で、あれ?あいつがいない・・は「白石」へ。 このシュールさはゾクっとする。 「文字」は中身のない文字が増殖していく社会への警鐘と思いきや、新しいステップへの華麗な進化にズコーってなりました。
また、あちら側の住人である友人や先輩や同僚の言動、生き様の奇怪さや突飛さが理解できないこちら側の主人公という構図において、その一人称の主人公が作者本人の投影とおぼしきケースが多々あり、そこから仄かな都市伝説風味が生まれているのも特徴的と言えるかもしれません。


夢巻
田丸 雅智
出版芸術社 2014-03 (単行本)
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