むしのほん / エドワード・ゴーリー
[柴田元幸 訳] クリスマスのギフト用の限定本として作られ、翌年、一般のハードカバー本として刊行されたごく初期の作品らしい。 モノトーンの緻密な線描ではなく、カラフルでポップな絵柄は“可愛らしい”と評するのがぴったり。
青、赤、黄色。 いとこ同士でご近所住まいの色違いの小さな虫たちが仲睦まじく七匹で暮らしているところに、ある日突然、黒い大きな虫がやってきて彼らの楽しい日常を破壊してしまいます。 色違いの虫たちは相談し合い、力を合わせて悪さばかりする乱暴な黒い虫をやっつけ、共同体の平和を取り戻すのでした・・めでたしめでたし。 という超オーソドックスな勧善懲悪のお話。
いつもながらストーリーは単純明快で、言うなれば、古典的な児童書、素朴な昔話のテイスティング。 なんだろう、ちょっと「敬虔な幼な子」を思わせる作風。 表面上、なんらパロディに改変して描いているわけでなく、昔話の定型をそのまま踏襲している感じに過ぎないのに、ゴーリーの手にかかるとどうてこうも薄ら寒くなってしまうのか。 昔話なら許されるはずの残酷さを素直に味わえないというか、昔話を昔話としてもはや読むわけにはいかない現代人の感覚を揺さぶり起こされるというか・・
姿形や性質や生まれの違う異分子を排除しようとする気味の悪さ、不穏な怖さは、ゴーリーがあからさまに描いていないからこそ、いや、それ以上にサイレントメッセージを忍ばせている素振りさえ露ほども示さないからこそ、否応なく炙り出されてくるとしか言いようがない。 センシティブでタブーなところを素知らぬ顔してほのぼのと淡々とえぐる辺り、非常にゴーリーらしい絵本だと思う。
本国では刊行当時、一部で黒人差別と取られ批判されたそうだが、それを言うならむしろ一段次元の外側から人種(だけではない)差別のあらましを風刺しているように思う。 両者は真反対の読解ということになってしまう。 むろん、全ては読者に委ねられているのだが。 一見なごなごとっつき易いだけにかえってゴーリー上級者向けかなぁ。


むしのほん
エドワード ゴーリー
河出書房新社 2014-12 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★
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