蟲の神 / エドワード・ゴーリー
[柴田元幸 訳] 本書は『ビネガー作品集 −教訓本三作−』(なんだそれw)と題して、「ギャシュリークラムのちびっ子たち」と「ウエスト・ウイング」と合わせた三冊セットで出版されたうちの一冊だそうです。 惨たらしくもシュールなこの感じは安定の黒ゴーリー・ワンダーランド。
悪い子が魔物に攫われて食べられてしまう子供向け教訓物語の不条理ヴァージョンと言いましょうか。 幼い少女ミリセント・フラストリィは悪い子じゃない(いい子かどうかも定かじゃない)けど、唐突に攫われて“蟲の神”の生贄に捧げられてしまいます。 いざ捧げられるところで終わりますが、まぁアレだね、食べられちゃったね。 裏表紙のお腹の膨らみからすると・・丸呑み;; 満腹(?)の蟲を見ていると、後ろめたくも場違いにクスッとなってしまいます。 「まったき動物園」にいそう^^; もう虫じゃないでしょ!その姿はw と突っ込みたくなります。
どっからどう見ても悪魔(死神?)の化身さながらの蟲一味。 よからぬオーラ全開の、その禍々しいことと言ったら! なにか邪悪で面妖な秘密結社を連想させるものがあり、およそ世紀末ヴィクトリア朝ロンドンの暗黒面を感じさせるミステリアス・ムードもりもりの作品です。 かくしてやっぱり、禍々しいことやってますよっていう、素ではなくてネタなんだよなぁ。 そんなところにゴーリーの中毒性があるように思う。
行方不明になったミリセントを心配するフラストリィの一家は、往年の裕福な良家といった体の粛々として沈鬱なゴーリー印満点の佇まいなのだけど、赤ちゃん(ミリセントの妹か弟)がなんか怖い・・扱われようが犬みたいで。 一番そこに薄ら寒さを感じてしまったのは何故だろう。
見返し遊び紙の隅のカットに見覚えが! パン屑じゃなくてドクロを撒きながら歩いてるヘンゼル風のとぼけた可愛い坊やは「ウエスト・ウイング」でも見かけた子。 本来あるべき童話や絵本が示すポジの世界と対を為す唯一無二なるネガの世界・・ この坊やの絵にはゴーリー作品のなんたるかをふと直観させるものが宿ってるような。 もしかして三冊セット本のシンボルマークだったのかな?と思ったけど「ギャシュリークラムのちびっ子たち」には(少なくとも翻訳版には)いませんでいた。
ABAB形で脚韻を踏んだ四行連句の原文は、今回は七五調の訳に生まれ変わっています。 古風な語り物めいた味わいが不気味さを引き立てていてぴったり。


蟲の神
エドワード ゴーリー
河出書房新社 2014-06 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★
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