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憑かれたポットカバー / エドワード・ゴーリー
[副題:クリスマスのための気落ちした気色悪い気晴らし][柴田元幸 訳] ゴーリー版クリスマス・ブック いつもの緻密な線よりやや太め。 背景もスモーキーな色合いで一面塗られているせいか、心なしあったかみを覚えるタッチ。 ゴーリーはゴーリーなのだけど、ちょっと新鮮。
世捨て人のエドマンド・グラヴル氏が、クリスマスイブに一人、お茶の準備をしていると、ポットカバーの下からバアハム・バグと名乗る変な生き物がジャーン!と飛び出してきて、やぶから棒に“教訓主義の効用を広めるべくやって来たのである”とか尊大げなことを言い出します。 すると、次々に、“ありもしなかったクリスマスの亡霊”、“ありもしないクリスマスの亡霊”、“ありもしないであろうクリスマスの亡霊“が現れ、これら亡霊たちに導かれて、グラヴル氏は世の中の情景を目にする冒険に出かけ・・と、徹底してディケンズの「クリスマス・キャロル」を下敷きにしたパロディの作りになってます。 当然ながらゴーリーらしいクレイジーでナンセンスなヴァージョンですが、様々な反復を繰り返し、シンメトリックでリズミカルなストーリーに仕立てられていて楽しかったー♪
すっかり忘れてるんだけど「クリスマス・キャロル」にバアハム・バグ的なキャラっていたっけ? スクルージ老人の相棒だったマーレイ老人の霊に対応しているのかな? だとするとマーレイ老人の霊はクリスマスの幽霊の出現を予言するだけで消えていったけど、バアハム・バグは旅にずっと一緒にくっついてきちゃったパターンかこれ。
亡霊たちは見せたい情景に向かって指をさしてるんだよね?そうだよね? なんかピストル向けてるように見えて仕方ないんだけども^^; 三亡霊たちがそれぞれに見せる五つの情景は、牧師さんが音叉を失くしてたり、何曜日かをめぐって言い争いしてたり、帰らぬフィアンセを思い出してたり、愛犬が剥製になって戻ってきてたり、それなりに残念な情景ではあるのだけど、三回とも最後、バアハム・バグがしゃしゃり出て、もっとも説教される要素のなさげな怪我した人にだけ反応して的外れの居丈高な口たたくというのが毎度のオチになってるっぽいw 三つの旅の中で唯一、中古壁紙盗難事件がリンクしてます。 何気にその発端から解決までの三段階を点景のように埋め込んでる辺り、洒落てますねぇ。
バアハム・バグ(バアハム虫)の原文は“The Bahum Bug”で、柴田さんの解説によると、これは、まだ改心する前のスクルージ老人の口癖、“Bah! Humbug!(ふん、馬鹿馬鹿しい!)”から取られているそうです。 BahとHumをくっつけて、Bugを独立させて虫の名前を作っちゃってるという。 ルイス・キャロル的な言葉遊びの妙ですね^^ もともと“Humbug”には、ペテン、ごまかし、たわ言、ほら吹き等々の意味があることを鑑みても、非常にぴったりのネーミング。
結局、旅を終えたグラヴル氏は、意味不明なまま改心して(それか単なる気まぐれか)、タイプライター・リボンの値上げに不平を垂れる投書の手紙はやめにして、みんなをクリスマスパーティーに招待する手紙を書き始めることに。 うんうん!辛くもディケンズ的! しかしながらそのパーティーたるや・・ ディケンズの敬虔なエンディングとはほど遠し。 ここでもバアハム・バグが率先してノリノリで大活躍してるみたいですよ。 おまえは何者なんだ! ふふ。 グラヴル氏、幸せそうで何よりw


憑かれたポットカバー
−クリスマスのための気落ちした気色悪い気晴らし−

エドワード ゴーリー
河出書房新社 2015-12 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★
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