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名文で巡る国宝の十一面観音 / アンソロジー
近・現代を代表する一流文筆家たちの名文を道案内に国宝の仏像を巡り歩く“読むガイドブック”。 古寺・名刹にゆるぎない日本の美と心を訪ねる“名文の旅”シリーズの一冊。 その十一面観音菩薩編。 国宝の十一面観音である全七仏(と、それぞれの仏像を所蔵する寺々)にまつわる十六篇の随筆が抄録ヴァージョンながら一同に集められ、章末には“旅の手引き”、巻末には“十一面観音の見方”が付載されている。
あえてそう選んでるのかは謎だけど、並々ならぬ眼識のナビゲーターばかりなのに、案外と真反対的なこと述べておられたりする。 感じ方に正しいも正しくないもないんだなって、自由でいいんだなって、格調高く品性香る空間に誘われながらも、何気にちょっと心安い気分にもさせてもらえたり。
大正期発表の著作「古寺巡礼」によって、いわゆる“古寺巡礼もの”を創始したのが和辻哲郎氏だということは、自分なぞが知ってるくらいに有名だけど、この先も手に取るまでには至れないだろう名著の片鱗に本書で触れることができたのは大きな収穫。 聖林寺の十一面観音を称美する箇所はレトリックの横溢感がそれはもう半端なかったなぁ・・
そのほか和辻氏の筆では、法華寺の十一面観音が光明皇后をモデルとして文答師(ガンダーラの名彫刻家)によって造られたとする伝説がどのようにして生まれたか、時代背景に切り込みつつ、この観音像が天平仏なのか貞観仏なのかを論評する件なども印象深かった。 また、観音像のヴィーナス的側面を紐解き、法華寺の十一面観音にまつわる光明皇后の伝説に想いを馳せる亀井勝一郎氏の情感豊かな筆、渡岸寺観音堂の十一面観音を彫った仏師の内面を信仰の在り方として論ずる白洲正子さんの筆、なぜ十一面観音に惹かれるのか自問し、観音菩薩とは何か? に迫る井上靖さんの筆・・ どなたも想い想いの視点で感性を迸らせておられた。
個人的には杉本苑子さんの「冬の茜」が好きだ。 随筆を読むのは初めてに近いのだが、凛としたお人柄が心地よく、清浄な風を感じた! 仏像の形象面にフォーカスされている陳舜臣さんの「南大和路の仏像」もよかった。 こんな感じの筆致で全国の仏像を紹介してもらえたらいいな。
戦国時代の戦火に巻き込まれ、堂宇はすべて焼失するも、市井の人々の手によって地中に埋められ守り継がれたという渡岸寺観音堂の十一面観音は、その造形美と運命が交錯し、ゾクゾクするほど心を揺さぶられてしまう。 そして室生寺! 嗚呼、室生寺! 行きたい・・(溜息吐息)

収録作品
【室生寺】
 室生寺にて / 白洲正子
 女人高野室生寺 / 佐多稲子
 南大和路の仏像 / 陳舜臣
【法華寺】
 美貌の皇后 / 亀井勝一郎
 古寺巡礼 / 和辻哲郎
 冬の茜 / 杉本苑子
 衣掛柳 / 会津八一
【聖林寺】
 古寺巡礼 / 和辻哲郎
 紅葉の海 / 永井路子
 聖林寺十一面観音の運命 / 立原正秋
【向源寺(渡岸寺観音堂)】
 湖北の旅 / 白洲正子
 向源寺・十一面観音 怒りも笑いも慈悲 / 梅原猛
 白鳥の湖のほとり / 吉村貞司
【観音寺】
 聖林寺から観音寺へ / 白洲正子
【六波羅蜜寺】
 十一面観音立像 / 津田さち子
【道明寺】
 十一面観音 / 井上靖


名文で巡る国宝の十一面観音
アンソロジー
青草書房 2007-03
(単行本)

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