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リヴァトン館 / ケイト・モートン
老人介護施設で暮らす98歳のグレイスの元へ、新進気鋭の女性映画監督が訪れた。「リヴァトン館」という貴族屋敷で起きた70年前の悲劇的な事件を映画化するため、唯一の生き証人であるグレイスに取材をしたいと言う。グレイスの脳裏に「リヴァトン館」でメイドとして過ごした日々があざやかに蘇ってくる。 そして墓まで持っていこうと決めていた、あの惨劇の真相も……。死を目前にした老女が語り始めた、驚愕の真実とは?
[栗原百代 訳] ケイト・モートンのデビュー作。 第一次大戦前夜からの10年間を舞台にした英国もの。 黄昏ゆく貴族社会の様子がくっきりと刻印されている物語・・ってだけで、反則なくらいアドバンテージあります。 面白くないわけがない。
2作目の「忘れられた花園」は、19世紀から20世紀初頭のイギリス児童文学と少女小説のエッセンスやモチーフをふんだんに散りばめたネタ的要素の強い小説に思えたけれど、こちらはもっとずっと素直でストレートな印象。
時代背景に身を沈め、その香を満喫しながら、蒔かれた種の行く末をゆっくりゆっくり見守るように読んでいく感じなのだけど、終盤クライマックスで一気に濃密なゴシックサスペンスが開花するのです。 ロマンス要素が強いけど、そこはやはり、お嬢様と侍女の主従関係の綾がサスペンスの主軸。 で、その真相は、呆気にとられるほど空転的で、え? これでいいの? ってくらい虚しく辛辣だったりする。 ある意味、旧世界の「美しさ」が踏みにじられるような描き方、これこそが移ろいゆく価値観のメタファだったのか。
狂おしい熱情と、戦争が遺した暗い傷と、取り返しのつかない齟齬によってもたらされた痛すぎる残酷なカタストロフが、長い時を経て、やがて廻り交差する運命の糸をもって静かな救済に転じるかのような。 過去、現在、未来を連綿と繋ぐスケール感ある物語でした。
デビュー作「スタイルズ荘の怪事件」を執筆した直後のアガサ・クリスティーがカメオ出演してたのがツボ! 実際のベルギー難民支援活動の様子なんかもチラッと出て、ポアロ来たー! って思ってしまった ホームズからポアロへ。 そんな時好の変遷が顔を覗かせてもいたり。


リヴァトン館 上
ケイト・モートン
武田ランダムハウスジャパン 2012-05
(文庫)

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