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霧越邸殺人事件 / 綾辻行人
アール・ヌーヴォー風の意匠を凝らした豪奢な館“霧越邸”で繰り広げられる惨劇。
クローズド・サークル、見立て殺人、暗号、アリバイ崩し、そして細やかな伏線・・ 様々な仕掛けを駆使しながら、それらを歯車のように機能させ、一転二転させつつ、破綻なく練り上げた本格ミステリ。 自力で解けるかギリギリの匙加減で提供されていて、あっと驚きたい派よりは、コツコツと伏線を拾いながら推理参加したい派寄りかなと思います。
でありながら、もう一方で、人の心を鏡のように映し出し、絡めとる異形の館“霧越邸”の場の力は、そこはかとなく謎めいて、まるで幻想小説のような風合いも醸し出しています。
綾辻さんが新本格の騎手と言われていた時代、作品は一部で熱狂的に受け入れられた反面、根強い批判にも晒されていたように記憶しています。 そんな最中に、本格批判へのアンサーという一面も込めて書かれたのではないかと感じるくらい熱量がありました。 上手く言えないんだけど、演劇論に託して推理小説を論じているかのような、霧越邸が本格ミステリの砦そのものであるかのような・・ 不思議な感覚にふと囚われたり。 本格ミステリを演出する舞台が備える超現実的な磁場を見事に具現化して見せてくれたような・・
筋書きの観念性に若さや青さを感じたり、役割的個性のみ与えられた登場人物には淡々しさを感じもするのだけど、衒学趣味に彩られた夢幻郷的舞台と、むしろ滑らかに溶け合い、異様な熱に浮かされたような、濃密にして清冽な、どこか儚くも眩しいまでの世界観を見せてくれました。
綾辻さんの理想とする本格ミステリの洋式美を暗示的にも明示的にも追求した(であろう)初期を代表する傑作だと思います。


霧越邸殺人事件
綾辻 行人
新潮社 1995-01
(文庫)
★★
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