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ホテル探偵ストライカー / コーネル・ウールリッチ
[稲葉明雄・小川孝志 訳][副題:世界の名探偵コレクション10] ウィリアム・アイリッシュ名義で書かれた「幻の女」のみ、大昔に読んだことがあるんですが、あの格別な雰囲気は忘れられません。 ウールリッチ、気になりつつもなかなか読めずにいて、今回やっと2作目。
日本独自編纂の中短篇集です。 表題のホテル探偵が活躍する「九一三号室の謎」は 「自殺室」が前篇、「殺人室」が後篇に当たり、合わせると中篇のボリュームになります。 他、短篇3作を併録。 ないかもしれない殺人に疑念を持ち、独り憑かれたように追求する話が多め。
表題作はニューヨークの聖アンセルムというホテルが舞台で、時代は1930年代前半。 夜のストーリーのせいか、仄暗くひんやりとしたイメージ。 ちょうど世界恐慌の頃で、ことさらには背景を描かないんだけど、内側から自ずと染み出てくる時代の気配が好き。 あとウールリッチって、こんなド派手な物理トリックもやらかすのか・・と、これは新たな発見。 まぁ、古典ミステリの世代だもんね。 でもやはり基調はサスペンススリラー。 トライ&エラーなパターン化された経過を辿るのだけど、とにかく飽きない。 むしろ執拗な繰り返しにどんどんハマってしまう。 軽妙なユーモアも漂っていて、気の利いた佳篇です。
ホテルに雇われて宿泊客を監視しながら安全を守ったり、トラブルに対処したりする“ホテル探偵”なる職業は実在したらしい。 ウールリッチはホテルで半生を送った作家として有名ですが、ホテル・聖アンセルムは自らが過ごしたホテル・マルセイユがモデルみたい。 またホテル探偵ストライカーは、初めて日本に紹介されたウールリッチの作品らしいです。 でもウールリッチはシリーズものを書かなかった作家なので、ストライカーの探偵譚が読めるのもこの中篇だけなのです。
「裏窓」よかったです。 初めて読みました。 原作に比べるとヒッチコックの映画はかなり陽性なのだね。 原作は偏執的で緊密で孤独な手触りが半端なかった。 でもラストをウィットで締めるのがエレガント。
残りの2篇は意外にもジュブナイル調で、眩しいような切ないような・・背伸びをした子供の冒険譚。 実は意外でもなくて、ウールリッチの一つのオハコ分野だったらしい。 知らなかった。
背景社会もそうだけど、人物も事細かく描写していないんだなぁと、解説読んでいて気づきました。 背景や人物が素っ気ないのに、場面や動きの細部を異様なほどフォーカスして描いたりする。 だから靄の中に押し込められたような、あの独特の世界が生まれるんだろうな。 リアルを削ぎ落とした空間と張り詰めた想念のミステリアスな均衡がたまらないです。 ウールリッチまた読みたい。


ホテル探偵ストライカー
 − 世界の名探偵コレクション10 −

コーネル・ウールリッチ
集英社 1997-05
(文庫)

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