わたしを離さないで / カズオ・イシグロ
昨夜、酷い夢を見て寝覚めが悪かったのだけど、寝る前に読み終えた本書の影響だろうなぁ。 直接的な夢ではなく、自分の力じゃどうにもならないものの前に抵抗もなにもかも放棄してしまうような感覚が・・ あ〜やっぱ、そうとうこれ引きずってると思う;; でも読んで後悔してるとか、嫌な本だったというのではない。 もう、ただ、凄い本だった。 根本的な歪みに目を向ける者のいない怖さ。 その上にどんな美しさや正しさを見せられても、どんどん不安になりおぞましくなり気持ちが悪くなる。 自分が壊れてしまいそうな揺らぎ。 こんな作品はじめて。 その辺のホラーが可愛く見える。 こういう題材だとお涙ものか、そうじゃなかったらサスペンスやSFホラー風味のケースが多いと思うんだけど、抑制された筆致で、淡々と綿密に人間を描いていく。 静かな世界に緊張の糸が張り巡らされていて、じわじわと真綿で首を絞められるような展開は、ある意味生粋のホラーといえなくもないけど、でもやっぱり人間力。 背景のリアルさや生々しさが極端にぼかされているのも効果的で、3人の主人公たちの感性が水際立って生き生きと迫ってくる。 人道的な環境で育った者の持つ感情の普遍性が悲しい。 こんな世界で人道的に人を育てることの是非・・ なんて恐ろしくて悲しいパラドックスだろう。 わたしの中では切なさみたいな、あまっちょろいものの入り込む余地がなかった。 訳者は土屋政雄さん。 無意識に原文の雰囲気を味わえてる気になって読んでいた。 素晴らしい訳だった。


わたしを離さないで
カズオ イシグロ
早川書房 2006-04 (単行本)
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★★★★
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| 天竺堂通信 | 2007/12/04 |