東洲しゃらくさし / 松井今朝子
写楽ものは面白い。 それぞれの作家さんが生み出す写楽像によって、同じ時代が描かれ、同じ登場人物たちが配されながらも、全く違った物語が繰り広げられるんだもん。 これもひとえに写楽という人物が謎に包まれていて、インスピレーションの宝庫であるからこそなのだろうけれど。
写楽を軸として読むと、後半少し散漫な印象を受けるかもしれないけれど、芝居に携わる2人の上方の男が江戸で奮闘した物語として、最後まですっと1本筋が通っている。
上方の人気歌舞伎作者である並木五兵衛(後の五瓶)がこの時期、鳴り物入りで江戸に下っている。 世間一般の文化風習、歌舞伎界の仕来たりや因習の違いに戸惑い、苛立ち、揉まれながら一皮剥けたり、逆に江戸歌舞伎を一皮剥いたりして、江戸での地位を確立していく様子が、東西の対比を随所に織り込みながら描かれ、読み応え充分。
内容紹介にドーンと載ってるので書いてしまうけれど、その五兵衛の元で大道具の彩色方をつとめる男、彼は五兵衛に先立って、偵察役として江戸に送り込まれたのだけれど、蔦屋重三郎に見初められて運命が一変する・・と書けばおわかりの通り、これが松井さんの“写楽”である。 でも写楽は五兵衛とは違い、上方だとか江戸だとか、そういう違いに惑わされない(というより関心が向かない)ような非凡さ、自分と対象物があるのみというような研ぎ澄まされた(研ぎ澄まされ過ぎた)世界観を持っていたように描かれていたと思う。 2人それぞれの“東州なんぞ洒落臭いわ!”みたいな心意気とその肌触りがこの作品の堪らない魅力だ。
ところで、お馴染みの春朗(北斎)や馬琴や歌麿は、本作ではほとんど出番がないんだけれど、一九はその如才なさや世話好きぶりを発揮して甲斐甲斐しく写楽の面倒を見ています^^


東洲しゃらくさし
松井 今朝子
PHP研究所 2001-08 (文庫)
松井今朝子さんの作品いろいろ
★★★
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