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東京新大橋雨中図 / 杉本章子
木版画に文明開化をもたらしたといわれる独特の画法、光線画で人気を博し“最後の浮世絵師”といわれた小林清親の物語。
幕臣であった清親が、明治という新しい時代へのわだかまりを胸の内に仄かに燻らせながらも、生きるために時代を受け入れつつ、やがて絵師として身を立て、成功を収めるまでの半生。
松井今朝子さんの「銀座開化事件帖」にも登場する十字屋の原胤昭がいたり、皆川博子さんの「花闇」に登場した無残絵の月岡芳年もいる。 わたしにとっての新顔は絵師の河鍋暁斎や版元の大黒屋平吉、主人公の清親も初めまして。
清親は杉本さんの筆によると、これでミズモノの世界を渡り歩いていけるのかと心配になってしまうほど、謙虚でお人よしで普通ぅ〜にいい人なのだ。 でも木版画に未来はないと悟るやいなや、自身で築き上げた光線画をパロディにしてしまう潔さ。 絵を“描き捨てる”恰好よさっていうか・・自分を買い被らない格好よさっていうか・・凄いと思った。 杉本さんはこの辺りをさらりと描いているんだけれど、実際はどんな心境だったんだろうってわたしみたいなチビっちぇ〜人間は思っちゃう。
なんていうか・・プライド高く妥協を許さない芸術家志向の“画家”ではなくて、版元に首根っこを掴まれながら、職業として絵を描いて庶民の心を潤し続けた“絵師”の悲哀や可笑しみや柔らかさや強さが清親の中に詰まってるような感じがして、やっぱりそれって、どこか江戸の絵師たちの心意気を思い起こさせるものがあって、でも同時に、激動の時代を生き抜く渡世術として実は素晴らしい資質だったりしたのかも・・などとぐるぐる考えてしまった。


東京新大橋雨中図
杉本 章子
文藝春秋 1991-11 (文庫)
杉本章子さんの作品いろいろ
★★
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