※ ネタバレご注意を ※

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - |
サラシナ / 芝田勝茂
「更級日記」の中で紹介されている“竹芝伝説”を物語として蘇らせた作品。 物語自体は児童向きらしく、メリハリがあり、勇敢で、可愛らしい。 巻末には更級日記中の原文が付記されているので、描かれている伝説のイメージをさらに勝手に膨らませて、しみじみと浸れるような糊代もあってよかった。
伝説の舞台となるのは聖武天皇が放浪中(笑;;)の奈良時代。 一時的に藤原勢力が弱まっているけど、そろそろ仲麻呂が台頭して来ようかという時期。 とはいうものの宮廷内には複雑な関係が錯綜し、誰もがその勢力図を気にしながら生きていることには変わりなく、そんな日々が疎ましくなってしまった皇女が、衛士と駆け落ちして武蔵の国へ下ってしまうという、ちょっと胸キュンな伝説。
第四皇女更級内親王は、どの歴史書にも記録として残っていない人物だけど(故意に抹消された可能性もあり?)武蔵の国の人々の伝説の中で生き続け、三百年後に京へ上る貴族の娘(更級日記の作者である菅原孝標女)の日記に記されることとなる。
吉備真備の娘の由利(「天平冥所図会」で活躍してました)が更級内親王の侍女として登場している。 玄靴籠散世梁臙世焚樟癲福)も楽しい。 もっと驚いたのが藤原宮子の伝説。 へぇ、こんな言い伝えも残ってるのかぁ〜。 でも不比等ならやりかねないとも思えてきて、妙に信憑性を帯びていたりするから怖い。
導入部で登場する和歌が素敵。 有名な和歌なのだけれど、調べてみたら万葉集に載っている作者未詳の東歌らしい。
多摩川に 晒す手作り さらさらに 何ぞこの娘の ここだ愛しき
(たまがわにさらすてづくりさらさらになんそこのこのここだかなしき)
耳に心地よい響き。 韻の踏み方がなんて可愛らしいんでしょうか。 布を多摩川の水にさらしながら、娘たちが唄う作業歌。 田舎の自然と娘たちの“さらさら”と重なり合うハーモニー。 透明感と軽やかさと牧歌的な温かさで包んでくれる。 四阿からこの光景を眺めている主人公の少女と少年。 この場面の風景が最高に好き。
そしてこの物語の要となる瓢の唄も大好き。
わが国に
七つ三つつ
くりすえたる酒壺に
さしわたしたる直柄のひさご
南風吹けば北になびき
北風吹けば南になびき
西風吹けば東になびき
東風吹けば西になびく
おっとっと・・・
広々とした武蔵の国の野原に酒壷がたくさん置いてあって、その中にとぷんと突っ込まれてぷかぷかと浮いている瓢。 風に吹かれてゆらゆらと踊る瓢。 この光景もなんて長閑なんだろう。 でもこのお話を読んだ後では、ちょっぴり切ない光景となって胸に残ることになる。 ひさご(ひょうたん)には天と地を繋ぐまじないの力が秘められているそうです。


サラシナ
芝田 勝茂
あかね書房 2001-09 (単行本)
関連作品いろいろ

| comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| - | - |
C O M M E N T








トラックバック機能は終了しました。