レベッカ / ダフネ・デュ・モーリア
[大久保康雄 訳] 英国ゴシックロマン不朽の名作と謳われる作品。 マンダレイという美しい荘園の領主に後妻として迎えられた若き花嫁の主人公。 しかし領地の入り江で溺死したといわれる前夫人レベッカの影が今なお館を支配し続ける。
死者であるレベッカの圧倒的な存在感に振り回され、怯え、追い詰められる主人公。 才知に長けた美貌の貴婦人と崇められていたといわれるレベッカに対して、作者はこの主人公に名前さえ与えない。
厳かにして絢爛たる館、舞踏会の華やぎ、美しい森や丘や入り江、花園の芳香と色彩・・絵葉書のように洗練された荘園の隅々にまで忍び寄るレベッカの影。 眼に見えない不穏さと緊迫感に包まれながら、輝くばかりのマンダレイでの日々がゆったりとひたひたと進行していく。 ゴージャスな空間とそこに張り巡らされた緊張の糸によって醸し出される濃密な気配。 ストーリーの大半を占めるこの情景をたっぷりと味わうことで、終盤の急展開がまた、より生き生きと惹き立てられていく。
抒情的かつ繊細に掘り起こされる名もない主人公の女性心理。 新妻らしいロマンチックな空想と劣等感の狭間で揺れる想い、夫の愛だけに縋る盲目的な情熱や、レベッカに潰されそうなぎりぎりの場所でよろめいている儚さ、無防備さ、危うさ、凡庸さ、無垢さ、愚かさ、初々しさ、弱々しさが、レベッカを通して逆説的にこんなに甘美に描き出されてしまうなんて。

<追記>
オペラ座の書庫 ←こちらの感想を読んで、おぉっ! と唸ってしまいました。 全篇通して、漠然と何かが歪んでいるような感じがしてたんだけど、でもそれをどう説明したらいいのかわからなかったのが、霧が晴れた感じ。 しっくり来ました。 歪められた(歪められているように感じられる)世界だからこそ、こんなにまでも甘美だったんだなぁ〜きっと。


レベッカ 上レベッカ 下
デュ モーリア
新潮社 1971-10 (文庫)
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★★★★
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