ヒナギクのお茶の場合 / 多和田葉子
多和田葉子さんはハンブルグに在住し、日本語とドイツ語で文学活動されている。 気にかけていた作家さんだったが読むのは初めて。 本作は主に現代ドイツが舞台の短篇集で、擬似エッセイ風の作品と寓話風の作品が織り交ぜられた無性に魅惑的な、個人的にはストライクゾーンど真ん中の一冊となりました。
なんだろう・・北ドイツの空気を想わせるような、ひんやりとした透明感に包まれた現代ヨーロッパのビビットな背景と、その中にふっと溶け込んでいる可笑しみのエッセンスと幻想空間。
長距離列車の旅と小説を書くことを二重写しにして描いたような、一作目の「枕木」に象徴されるように、どの作品も動的なイメージ。 絶え間なく動き、現れては消えていくような。 でもその中にストップモーション的な描写の美しさもあって、残像がくっきりと残るのです。 大都市の水路を貸しボートに乗って流されていく風景の涼しさとか、何十何百もの落ちた林檎が発酵していく甘酸っぱい小径に広がった、芳醇で静かで少し寂しい気配とか・・
文章表現も独特の肌触りとリズム感とが雅で、でもそれ以前に感性の研ぎ澄まされ方が半端なくて。 なんだかこう、イマジネーションの原石が美しく磨き上げられる様子を見ているような気がしてくる。 この作品の良さや読んで感じた気持ちをアウトプットできないのが辛い・・ えもいわれぬ、ならではの世界なのでした・・ひたすらに。


ヒナギクのお茶の場合
多和田 葉子
新潮社 2000-03 (単行本)
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★★★★
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