※ ネタバレご注意を ※

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - |
鶴屋南北冥府巡 / 皆川博子
皆川さんの描く、写楽、英泉、田之助と、みんなよかったけれど、南北もいい。 こうやって名前を並べてみると、深淵的な凄味を感じさせるような独特の強烈なオーラという点で、どの人物も皆川さんのイマジネーションを刺激するんだろうなぁ〜と改めて感じる。
四世鶴屋南北は、近松門左衛門や河竹黙阿弥らと並び、江戸時代を代表する狂言作者として名を残しているのだが、出世が遅く、才能を開花させたのは五十代になってからだという。 この作品は、南北の鬱屈した下積み時代にスポットが当てられている。 女郎買いに明け暮れたり牢に打ち込まれたりの日々、惚れ込んだ役者尾上松助との地獄の道行き、松助と弟子との愛憎の坩堝を間近に垣間見たり・・と、南北が後に世に問う悪と闇と血と嗤いで彩られた絢爛たる作品世界を暗示させるような凄まじい半生が描き込まれている。
松井今朝子さんの「仲蔵狂乱」と、表と裏、陽と陰といった感じ。 「仲蔵狂乱」では、仲蔵と立作者の金井三笑との確執が、仲蔵側から描かれていて、三笑は殆ど悪玉だったんだけど、こちらでは、三笑側から描かれていて、確かに陰謀家なんだけど、実力者としての一定の評価がなされている。 そして、仲蔵と立作者の桜田治助コンビの正統派的な美に対して、南北と松助コンビの毒のある荒んだ美といったら・・ いいなぁ〜どっちも!(節操なし;;)
黙阿弥と小団次でも感じたんだけれど、ある役者に惚れ込んで、この役者のために、自分がどうしても“これ”を書きたい! という強い想いが、狂言作者にヒット作を書かせる(結果的に出世する)原動力になったというようなことは、本当にあったのかもしれないなぁ〜と感じたり。 身の内に力は脈打つのに、身動き取れない苛立ちの日々を松助付きの立作者になりたい一念でのし上がってきた南北の、滾る想いの結晶のような演目に熱演で応える老いた松助・・ 冒頭のシーンは何度も読み返してしまった。
でも不思議とこの作品、というか皆川作品の共通項でもあるのだが、どろどろ感はないんだよね。 南北の気質そのものが、じめついた空気を寄せ付けない・・ そんな描かれ方だ。


鶴屋南北冥府巡
皆川 博子
新潮社 1991-02 (単行本)
皆川博子さんの作品いろいろ
★★★
| comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| - | - |
C O M M E N T








トラックバック機能は終了しました。