雨柳堂夢咄 其ノ一 / 波津彬子
明治の終わりから大正頃でしょうか。 骨董屋・雨柳堂の孫息子の蓮青年が、古美術品や古道具に宿る魂と、現世を生きる人たちの心を橋渡ししたり、残された“想い”を紐解いて浄化させてあげたりする、ロマンティックで切なくて時々可愛い幻想譚の連作集。 十話収録。
ふふふっ、好み♪ 和洋折衷建築やガス灯や人力車や袴姿の女学生や華族の令嬢などが息衝いている世界です。 そこにしっぽりと佇む雨柳堂。 花魁の人形、蒔絵の鏡台、三つ襲の友禅など、絵が綺麗でうっとりしてしまいます。
妖しのものたちに“呼ばれて”しまう蓮くんなのですが、そうした骨董の品々、そこに宿るものたちに向ける眼差しが穏やかで優しい。 椿の精や千年狐や金の鳥や唐子人形や、今は亡き人がこの世に残した想いや、心の拠り所を失くしてしまっている可哀想な人たちが、吸い寄せられるように雨柳堂に導かれ、癒されていくお話なので、胸がキュンとなるような切ない話ばかりなんですが、情念の暗い闇といった感じの後味の悪いものがなくて非常に読み口が良いです。
解説の藤本由香里さんによりますと、“能を見る”という体験は、この世のものであってこの世のものでない“あのひとたち”に会いに行くという体験なのだそうで、この作品の本質は能の世界に通じるものがあるのだとか。 雨柳堂の世界で遊ぶうちに、能の魅力が形を与えられた気がしたのだそうです。 へぇ、そういうものなのかぁ〜。
ずぅ〜っと浸っていたくなります・・


雨柳堂夢咄 其ノ一
波津 彬子
朝日ソノラマ 2002-6 (文庫)
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★★★★
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