春朗合わせ鏡 / 高橋克彦
千一シリーズの3作目。 とはいってもこのシリーズ、千一こと北町奉行所筆頭与力の仙波一之進が主役を張るのは1作目の「だましゑ歌麿」だけ。 2作目の「おこう紅絵暦」の主役は新妻のおこうだった。 今回は、春朗こと若き日の葛飾北斎。
貧乏絵師と、陰間上がりの美青年、蘭陽の珍(?)コンピが活躍するミステリ連作集。 春朗は前2作でも脇役ながら要所要所で精彩を放っていたし、蘭陽は「京伝怪異帖」で、確か和み部門担当みたいな感じで、美味しい役どころを射とめていたような微かな記憶があるんですが・・
御用鏡師の叔父や幕府お庭番の父、追い出された古巣の勝川派からも、才能を見込まれ、かなり熱い眼差しを向けられているのだけれど、描きたいものを自由に描く絵師であり続けたいという情熱や、ほったらかしの家族に対する罪悪感や、胸の内には少し悶々としたものを抱える春朗なのだった。 でも気の置けない仲間たちや肉親との交流を深めながら、活き活きと日々を送っていく。 目を掛けてもらっている板元の蔦屋から挿絵の仕事などを回してもらったり、枕絵でこっそり稼いだり、なんとか暮らし向きを立てながら、未だ仕事にならない風景画など、熱心に描き続ける日々の中、ついつい持ち前の好奇心を発揮して巷の事件に首を突っ込んでしまうようで。
勝俵蔵(後の鶴屋南北)が、彼らしい舞台装置の仕掛け人として一役買う「夏芝居」がよかった〜! 筆職人や鏡職人にまつわる物語や、寛政の改革に首根っこを押さえつけられている江戸庶民の様子、もちろん浮世絵の薀蓄もあり、もろもろが事件と有機的に係わって、スカッとホロっと楽しい娯楽小説に仕上がってます。


春朗合わせ鏡
高橋 克彦
文芸春秋 2006-01 (単行本)
関連作品いろいろ
★★
| comments(0) | trackbacks(0) |
C O M M E N T








http://favorite-book.jugem.jp/trackback/270