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遠野物語 / 柳田国男
改版前の昭和48年版の新潮文庫で読みました。 「遠野物語」と「遠野物語拾遺」が収録されているものを読みたかったんだけど、角川ソフィア文庫が図書館になかったので。 「遠野物語拾遺」は、厳密には柳田国男の執筆ではないという見解の下、この古い文庫では、ゴタゴタの経緯などが付記されていたけれど、現在はどういう扱いになっているのかわかりません。 でも、改版の際に外されちゃったんですよね。 言わずと知れた名作ですが、再読ではありません。 初読みです。
なんかこう・・知的原石の宝庫のよう。 実はもっと物語チックなのかと思ってたら全く違ったのね。 逆に物語性を殺してる。 教訓や考察のようなものも一切なく。 極端な話、言い伝えを箇条書きにしたかというほどに徹底された簡素なスタイルでありながら、民俗学としても文学としてもずば抜けているところが、この作品の凄さなのかも。 極めて土着的な遠野郷の村人の暮らしと、その底に横たわる根源的なものを、純粋に、忠実に、写し取りたかったのだろう著者の強い信念がズシンと響いてくる。 一話一話の小さな話が、やがて複合的に作用して、気がつけば、頭の中には豊穣な遠野ワンダーランドが広がっている感じ。
狐に化かされたり、神仏像が動いたり、死者が生き返ったり、河童、天狗、座敷童子、山男、山女、神隠しなど、何処か馴染み深い怪異譚だけではない。 姥捨ての話や子殺しの話、人肉を喰う話などのタブーの領域、名所の由来や“まじない”などの俗信の類、冠婚葬祭や年中行事などの習俗、信仰に至るまで、自然を畏れ、自然に親しみ、八百万の神々や動物や野山と溶け合って暮らしている村の人々の深い息遣いが、そこはかとなく立ち込める。
でも不思議と、淫靡で艶っぽい男女の話がない。 そこだけ、すっぽりと抜けている感じさえする。 坂東眞砂子さんの民話の世界とか、今昔物語に馴染んでいたせいか、ふと気になった。 絶対その類の伝承がないはずがないので、敢えて外したとしか思えないのだけれど。 そのせいか、どこか静謐で敬虔な雰囲気が強められているのかなとも思う。
常民の遺伝子に刻まれているような、同時に結界に守られた特別な故里であるかのような究極の味わい。 つい“常野”の人々が頭にチラついてしまうのでした。 本末転倒なんですけど^^;


遠野物語
柳田 國男
新潮社 1973-09 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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