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アイの物語 / 山本弘
数百年後の未来。 美しいアンドロイドが人間の青年に物語を聞かせるスタイルで、7篇の作中作を編み上げていくという構成は、まるで千夜一夜物語のような情趣。
語られるのは、20世紀末から21世紀初頭頃(つまり現代)に人間が作った、仮想現実の世界やアンドロイドに纏わるSFファンタジーで、古め気味なわたしは、旬なサブカルっぽさに、時々置いてけぼりにされましたが、いやぁ〜新鮮だったなぁ。
巻末の初出を見ると、短篇として発表された作品に、ラストの2篇を書き下ろし、各短篇毎のインターバル、プロローグやエピローグを書き加え、長篇に仕上げられたのでしょうか。 後付けでアレンジされたのだとしたら、凄すぎます。 脱帽です。
どの短篇も健全過ぎるくらいのお話なので、実は途中“見切った”みたいな思い上がった気分になってしまったんですけど、読み終えれば、清らかで正しい物語が集められていたことにはこんな想いが込められていたのか〜と、胸が熱くなります。 最後に語られる真実の断片が、どの物語にも埋め込まれていたことに気付かされ、全ての物語が再び息を吹き返し、胸に刻み直されるような気持ちになります。 奥深いです・・
わたしは「ブラックホール・ダイバー」が好きでした。ちょっと翳りを帯びたお話で、途方も無い孤独と静けさが、打ちのめされるほどに美しく・・ さらに、ラストの“真実”へとシンクロしていく、ダイナミックに突き抜けた部分とのコントラストが絶妙なのでした。
今日、地球の覇者となり君臨する“ヒト”という生命体の本質、その可能性と限界の捉え方が素晴らしかった。 高度な知能を持ちながら、世界を平和に導くことのできるAIには、種の保存の本能が組み込まれていないということが、興味深かったです。 種の保存の本能というのは、それがなければ、種を繁栄に導くことはできないけれど、利己的な一面が働きすぎれば、その種を滅びヘ導く可能性さえ秘めているのかもしれません。 まるで藍と青のことわざのようなヒトとAIなのですが、ヒトの驕りを戒めると同時に、その果てしの無い想像力には、何かしら未来を切り開く鍵が隠されているという、力強いメッセージを受け取った気がしました。


アイの物語
山本 弘
角川書店 2006-06 (単行本)
関連作品いろいろ
★★
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