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オリガ・モリソヴナの反語法 / 米原万里
米原さんは、ノンフィクション、エッセイなどで多くの名著を残されていますが、本作品はソビエト連邦現代史の真実に肉薄した“小説”です。
少女時代をチェコ・プラハのソビエト学校で過ごした日本人女性、弘世志摩が、30年の時を経て1992年、ソ連崩壊後のモスクワを訪れる。 志摩がソビエト所縁の人たちと共に過ごした60年代は、スターリンの死後、“スターリン批判”を経て、フルシチョフの“雪解けの時代”に差し掛かっていた時期。 その当時、多感な志摩の胸を揺さぶり、その後いつまでも居座り続けた想いや謎が、旅の道程で解き明かされ、詳らかにされていきます。 懐かしい恩師や旧友や初恋の少年の抱えていた苦悩や、知られざる過去の真実を紐解こうとするうちに、30年代後半から40年代(スターリン時代)の圧政の渦に呑み込まれ、数奇な運命を辿った人々の心の叫びがリフレインされ、ソ連という国家の深層部へとメスを切り込んでいくこととなる過酷さ。 ソ連人で、スターリン時代の粛清に無関係でいられた人は皆無に等しいというほどの深く果てのない恐怖政治の闇が、真実に近づくにつれ、容赦なく立ち現れてきて、読んでいて胸が塞がれる思いなのだけれど、物語のトーンは決して暗くない。 希望と不安が綯い交ぜとなった船出ではあるけれど、虐げられた人たちの声が、少なくとも社会の表舞台へ掬い上げられ始めた、民主化ロシアの息吹を感じたり、独裁体制下のラーゲリで、懸命に前向きに生きようとした人たちに敬意を払いたくなるような、温もりと強さを湛えている物語。
ロシアという国は、伝統的に踊り子の国なのですね。 普通の市民が地元のダンス教室の発表会を凄く楽しみにしていたり、そもそも日本とは、ダンサーの需要そのものが圧倒的に違うし、踊りが生活の中に活き活きと根付き、大衆と共にあり続ける土壌があるからこそ、人々を魅了して止まない超一流のプリマドンナが誕生し得るのでしょうね。
ロシアと日本のことわざや比喩表現などの言語比較も、それとなくあちこちに盛り込まれていて、民俗や文化的なエッセンスが芳しい作品でもありました。


オリガ・モリソヴナの反語法
米原 万里
集英社 2005-10 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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