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新釈遠野物語 / 井上ひさし
ずっと昔に読んだはずですが、遥か忘却の彼方でした。 最後の愉快などんでん返しさえも、有難いことにきれいさっぱり抜けていたのは、思いがけない幸運だったかなと。
タイトル通り、「遠野物語」を下敷きに、遠野近郊に伝わる民話・説話の世界を井上ひさしさん流に再構築した連作物語集。
「遠野物語」が、遠野出身者の佐々木鏡石氏の語った内容を柳田国男が、簡素な美しい文体でまとめ上げた形だったのに対して、こちらは、語り手となる犬伏老人と、聞き手となる青年“ぼく”のやりとりをそのままのスタイルで“ぼく”が書き留めたという体裁を取っています。 なので、より小説的になっていると同時に、これこそが民話が伝承される原風景なのだなぁ〜と感じさせられ、受け継がれる瞬間に立ち会わせてもらっているかのような味わいが残ります。
「遠野物語」の序文にはこんな一文があります。
鏡石君は話上手には非ざれども誠実なる人なり。自分も亦一字一句をも加減せず感じたるままを書きたり。
対して本書では・・
犬伏老人は話上手だが、ずいぶんいんちき臭いところがあり、ぼくもまた多少の誇大癖があるので、一字一句あてにならぬことばかりあると思われる。
とあり、すっかりパロディになっていて笑えます^^
また、「遠野物語」の名文句
願はくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ。
の部分は・・
平地人の腹の皮をすこしはよじらせる働きをするだろう。
と気弱げなのがナイスです。 馬と人間の娘が愛し合う話や、赤い顔をした河童の話、狐に化かされる話、沼の主の話、予言者の話、山男に追われる話、助けられる話などなど、山間部の大自然や獣たちや土着の神々との交わり合いなくしては生活が成り立たない、「遠野物語」の世界観をそのままに、物語性豊かな“小説”へと昇華させ、さらに「遠野物語」にはなかった艶っぽい部分も加えられ、民話の故里が活き活きと蘇ります。
主人公の青年“ぼく”は、若かりし日の著者自身がモデルのようで、大学を休学し、遠野近在の山奥の診療所でアルバイトをしていた時期が本当にあったらしいです。 本書の舞台となる昭和28年〜30年と同時期なのかもしれません。 アルバイトの傍ら、山中の岩屋に住む謎多き犬伏老人から、老人の過去に繋がる様々な話を聞く・・という趣向なんですが、それにしても、一話毎に犬伏老人の職業が変わりますし、なんとも重い過去を幾つも背負っておりまして、やはりちょっぴり胡散臭げといいましょうか・・まぁそこがミソなんですが^^;


新釈遠野物語
井上 ひさし
新潮社 1980-10 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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