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あやつられ文楽鑑賞 / 三浦しをん
三浦しをんさんの文楽鑑賞記。 初心者のための文楽読本って感じです。 面白かったー^^ 文楽って何? というレベルで読んでしまって大丈夫です。 そういう人にこそお勧め♪ 実は「仏果を得ず」が気になってるんですが、ど素人でいきなり文楽界を描いた小説を楽しめるのか? と、ちょっと尻ごみしていたわたしに、本書は打って付けでした。 というか「仏果を得ず」のパイロット版(?)みたいな意味合いも込めて出版されたのかもしれません。
有名な演目の解説や、楽屋を覘いたり、演者さんへのインタビュー、東京や大阪での定期公演だけではなく、愛媛の内子座(江戸時代の風情を残した古い芝居小屋なのだそうです)にまで足を運んで上演の様子をレポートしたり、そこへ更に、しをんさんの愛あるボケやらツッコミやらが炸裂して、文楽を満喫している悦びが伝わってきます。
「仮名手本忠臣蔵」の大星由良助の厭らしい“溜め”とか、ニヤリとさせられるし、「山崎街道出合いの段」の斧定九郎って、初代仲蔵が演じて当たり役を取ったという、あの定九郎? ひょぇ〜 こんなこんなチョイ役だったんかぁ〜。 などと、いちいち感嘆してました。 テレビドラマの「忠臣蔵」の、ただただ武士道精神への賛美を煽るような、泣かせますよぉ〜的な脚本が苦手だったんですけど(ごめんなさい、最近はどうなのか知りません・・)、忠義心を示さなくてはならない苦悩や虚しさが、しっかり描き込まれていて、むしろそこが「忠臣蔵」の醍醐味だったなんて。
近松門左衛門作の「女殺油地獄」は、しをんさんが最も傾倒していた感があったせいかもしれませんが、相当に心揺さぶられるものがありました。 近松ってやっぱり凄いです。 南北や黙阿弥関連の小説には、接したことがあるんですが、“もんもん”(←しをんさんが勝手につけた近松のあだ名w)とも、俄然、お近づきになりたくなりました。
あと、すっごく面白かったのが落語の中に登場する文楽^^ ジャイアンリサイタルを彷彿とさせる素人義太夫の傍迷惑ぶりが最高でした。 でもそれだけ文楽が生活に溶け込んでいて、人々に愛されていたんだなぁ〜と思えて、少しジンとくるのです。
文楽は、能や歌舞伎と違って、世襲制があまり強くないということも驚きでした。 本書の第1章は、三味線の鶴澤燕二郎さんへのインタビューで始り、最終章は、その燕二郎さんの、六世鶴澤燕三・襲名披露公演のレポートで幕を閉じます。 六世燕三さんは、家柄を持たない研修所出身者として文楽の世界に迎え入れられ、紛れもない実力で偉大な名跡を継がれたことに、そして五世燕三さんとの静かで熱い師弟の絆に胸がいっぱいになって、本を閉じたのでした。
読む前は、何でしをんさん、歌舞伎ではなく文楽? って思ってたんですけど、読んでみてなんとなく理解しました。 歌舞伎というのは、“人ありき”なんですね。 なんてったって役者さんという花形が存在するんですから。 文楽というのは、もうちょっとストイックな感じがしました。 語り(義太夫)と音(三味線)と動き(人形遣い)という三要素が融合して、入れ物でしかなかった人形に魂が吹き込まれるということに、読んでいて、エロティックなくらいゾクゾクしてしまったし、その感覚がえもいわれぬ恍惚感に変わる瞬間があって、そこへ落ちてしまったんだろうなぁ〜。 しをんさん、幸せ者だなぁ〜と思いました。 専門知識をこね繰り回すのではなくて、鋭敏な感性で勝負しているエッセイなので、素人をも引きずり込む吸引力が凄いです。


あやつられ文楽鑑賞
三浦 しをん
ポプラ社 2007-05 (単行本)
関連作品いろいろ
★★
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