七代目 / 竹田真砂子
歌舞伎づくしです♪ 江戸初期から幕末間近まで、それぞれの年代を彩った名優さんたちを交えながら、歌舞伎に魅入られた江戸庶民の人間模様を小粋にしっぽりと描いた10篇の短篇集。
一話ごとに時代が少しずつ下っていくわけなのですが、市井の暮らしぶりとか、狂言の趣向など文化の変化には、あまりスポットは当てられていません。 とはいっても、後期の話では、豊かになった町人や、戯作者や噺家が登場したり、上方にリードされていた文化が、徐々に江戸から発信される庶民の文化へと変わっていく様子などがさり気なく垣間見られたりしますけれども、でもむしろ、歌舞伎という芸能の本質というか・・どちらかというと“変わらない”部分を大切に描いているように感じられました。
寛永元年に、初めて江戸で歌舞伎興行が認可を受けてからまだ間もない時期、空き地を竹矢来で囲って設えたような戯場で舞っていた初代・勘三郎の頃から、執拗に繰り返され続けた幕府からの弾圧を掻い潜り、役者も見物も舞台裏も一丸となって櫓を守り続けてきた逞しさや誇りや情熱が、一貫して底に流れていたような感じがします。
舞台上で殺されたという初代・勘三郎、若衆方で名を馳せながら唐突に出家してしまった市村竹之丞、元禄年間に伊藤小太夫が着て、上方にまで流行らせたという小太夫鹿の子、文政年間には、本櫓の市村座、控櫓の桐座まで倒れ、座元がずぶの素人だったという玉川座が健闘していたり、歌舞伎興行の取り潰しと引き換えに江戸追放となった七代目・団十郎(海老蔵)の話などの実在のエピソードに、生身の温もりや哀感や情念が吹き込まれて、心揺さぶる物語が紡ぎ出されています。
どれも外せないくらい、みんなよかったんです。 こういう雰囲気大好きなんです。 なんて言ったらいいんだろう。 人情っぽい話にも、情念っぽい話にも、どこか諧謔のようなものが潜んでいて、作者の一歩引いた目線がしっかりと存在しているような・・ 作者と物語とのこの距離感が、わたしにぴったり嵌ってしまいました。
傾き(かぶき)続けた役者たちと、舞台に熱狂し続けた見物たちの熱い想いが、しんみり伝わってくる燻し銀のような作品集です。


七代目
竹田 真砂子
集英社 1998-03 (単行本)
竹田真砂子さんの作品いろいろ
★★★★
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