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遺失物管理所 / ジークフリート・レンツ
[松永美穂 訳] 現代ドイツが舞台の作品は殆ど読んだ記憶がなく、なんとなしに新鮮。 著者はドイツのベテラン作家。 ハンブルクらしき北ドイツの大きな都市の大きな駅の、遺失物管理所を起点に繰り広げられる物語。
窓際的な部署なれど、人と物の悲喜こもごもが宿り、今にもドラマが起きそうな気配。 配属されたばかりのヘンリー青年などは“おもちゃ箱”と勘違いしている有り様。 仕事というより、遺失物や届け出人の“声”に、嬉々として耳を傾け、甲斐甲斐しく世話をやいている。
人はこんな物まで失くしたり忘れたりするものなのか。 遺失物には一体どんな過去が秘められているんだろう。 持ち主に見捨てられる物もあれば、迎えに来てもらえる物もある。 取り置き期限を過ぎればオークションにかけられ、新しい持ち主と出会えることもあれば、廃棄されていくこともあるのだろう。 自分の物だと証明するために届け出人に課せられる手続きが凄いことになってたり^^ ヘンリーが調子に乗っていてかなりユーモラス。
一部に根差した排外的な空気や、若者たちの暴走、リストラなど、社会の陰影が色濃く織り込まれているんだけれど、それらを呑み込みながらも日々は流れてゆく・・みたいな、結構淡々とした抑揚のないストーリー。 何が一番の魅力かというと、規則重視のイメージが強いドイツの中で、ちょっと“規格外”気味に映る主人公のヘンリー。 読者によって好みが分かれそう。 それだけステロタイプのキャラではなくて、長所と短所がミックスされて、不思議なオーラを放ってるって言えるかも。 お坊っちゃんで、目標意識がなくて欲がなく、根無し草のようにフワフワしていて、世間を舐め切ってるように見えて、イラっとするところもいっぱいあるのに、妙に憎めない。 周囲の人たちが、小言をいいながらも、つい甘やかしてしまうのがわかるような気がする。 本質的に善意の人であるところ、めそめそぐじぐじしないところは、掛け値なしに彼の美点。 ストーリーの展開と共に欠点が克服されていくわけでもなく、それでもやっぱり彼のいい所を評価してあげられるようなエピソードが多々あり。 人間って結構こんなもんなんじゃないか? って思えてくる。
読み終えてみると、弱者に向けられた眼差しが優しい物語だったな・・という印象。 それと、遺失物管理所というのは、豊かな時代の副産物なんだろうなぁ〜と思う。


遺失物管理所
ジークフリート レンツ
新潮社 2005-01 (単行本)
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