告白 / 町田康
初町田さん。 明治中期に河内の水分村にて、城戸熊太郎と谷弥五郎が引き起こした惨殺事件は、河内音頭のスタンダードナンバー「河内十人斬り」のモデルとなって、任侠ヒーロー伝説のように唄い継がれているという。 この事件に至るまでの熊太郎の生き様を内面から執拗に追っていく道程がこの小説。 ところが町田さんの手にかかった熊太郎は、アンチヒーロー、アンチ任侠の申し子のようで、アホ臭くて切実で痛くて哀しい、ダメダメ熊太郎。
極度に思弁的な熊太郎は、思ったことを言葉に変換できずに発散できない自意識を常に頭の中で捏ね繰り回している。 他人の視線を意識し過ぎて自分を取り繕おうとすればするほど益々思弁に毒され、思いと行動と言葉とがどんどんチグハグになっていく。 うぅ・・身につまされるなぁ。 これって現代の若者が少なからず苦しんでいることではないのか? でも熊太郎の場合は、明け透けで朴直な河内の百姓文化の中で、たった独りで社会と繋がれない孤独を背負ってしまっている。 そんな熊太郎が、曲がりなりにも彼なりに死ぬまで社会と係わって生きようともがき続けた克明な記録、破滅へ突き進む負の連鎖のドツボが描かれていくわけなのだけれど、町田節とはこれかぁー! と体感しました。 疾走感と脱力感、洗練された表現と俗っぽい言い回し、反復するビートのような怒涛のリズムは土着的な空気と絡み合い、根源的で猥雑なエネルギーがぶつかり合うような奔放さを漲らせている。 なのにそこに描かれる熊太郎の途方もない閉塞感といったら・・ 読み出したら止まらない強烈なリーダビリティ。 ズブズブと小説の中に埋もれていきました。
ところで、葛木ドールと葛木モヘア兄弟が、完璧頭の中に居座ってます;; 正味の節ちゃんと合羽の清やんも飛び交ってます;; 恐るべきネーミング。 ていうか、描いてしまうんですよ。 ドールやモヘアの顔をね。 ベンと紙があるとつい。 つつっと手が動いて。 どうにかして欲しい・・正味。


告白
町田 康
中央公論新社 2008-02 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★★
| comments(0) | trackbacks(0) |
C O M M E N T








http://favorite-book.jugem.jp/trackback/304