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家守綺譚 / 梨木香歩
遠野物語」のような民話的世界観の中から、美しいエッセンスだけを掬い取って優しく織り上げた“つい百年前の物語”です。 実は「遠野物語」を読んだ後で再読するのがちょっと怖かったんですが、この物語が色褪せることは全くなかったです。 情緒や居心地のよさだけではない、風土に根ざした魂の呼吸を感じることができるからかもしれません。
亡友の実家の家守として過ごす、売れない物書き綿貫征四郎の一年を追っていく連作掌編集。 人間、動植物、鬼や妖物、死者、神々が共存し、一体となって地脈、気脈、水脈を循環しながら季節は移ろい、時は巡る・・そんな世界観の中に、文明の足音がついそこまで聞こえている感じです。 時代の進歩との間に少しばかり齟齬を起こしている主人公と、今はもう壁の向こうに塗り込められてしまった様々なものたちとの交歓の記録を通して伝わってくる、柔らかくて瑞々しくて伸びやかな四季のさざめきに、胸を鷲掴みにされます。
自然科学が大勝利を勝ち取る寸前、最後の残り火がぽっと瞬いているかの如き愛おしい郷愁・・ でも同時に、例えば電気にも小鬼にも“理解できないものを受け容れる”という同じ姿勢を示す主人公に、過去と未来を結ぶ結節点のような不思議な感覚を抱いたり、対立ではなく共存への意思、自然科学すらも包含しようとする広く深く果てのない世界観のようなものが揺蕩っている印象も受けるのです。 単なる懐古趣味でも居丈高な文明批判でもなく、在るがままの戸惑いや許容や歓びがそこにはあって、胸を打たれるのです。 やはり、わたしにとってはワンアンドオンリーな大切な一冊なのでした。 ほっこりクスクス、あちこちで笑えるんですが、“羊の風情のゴロー”を想像した時はお腹が捩れそうでした^^

<追記>
香桑さんという方のアマゾンレビューの中の一文です。
うわっ、いいこと書くなぁ〜と思いました。
その家は、彼岸と此岸の交わる場所、過去と未来の重なる仮屋。平気で矛盾を背負い込む健康な衆生ではないものの、避難場所。
滅びの予感は雨のようにしっとりと降り注ぎ、やがて滋養となるのだ。


家守綺譚
梨木 香歩
新潮社 2006-09 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★★★
| comments(4) | trackbacks(1) |
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C O M M E N T
こんばんは。偶然、こちらの記事を見つけました。
お褒めの言葉をありがとうございます。
| 香桑 | 2008/08/03 |

香桑さん、はじめまして。
わぁ ビックリした^^ 思いがけない嬉しいご訪問です。
ブログ、公開されていらっしゃったのですね。
本来なら許可を頂かなければいけないところでしたのに・・
アマゾンで香桑さんの文章を見つけたときに、なんだかキラっと輝いていて
一目惚れしてしまったのです。お許しくださいませ。
ご丁寧にコメントを残してくださって、ありがとうございました。

追伸
先ほどトラックバックを送らせていただいたのですが失敗してしまうので、
また、そのうちにチャレンジさせていただきますね。
| susu | 2008/08/03 |

いえいえ。びっくりさせてしまいました。(^^;;
文書を気に入っていただけたことが嬉しいですもの。
引用していただいたことが光栄です。
今後もよろしくお願いいたします。
| 香桑 | 2008/08/04 |

こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
スパムも素通りするような僻地で、マイペースをぶっちぎっておりすが;;
声をかけて頂ければ嬉しいです。
わたしも、これからは時々お邪魔させて頂きますね♪
| susu | 2008/08/04 |









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