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北の愛人 / マルグリット・デュラス
[清水徹 訳] 須賀敦子さんの「霧のむこうに住みたい」の中で紹介されていた一冊。 1930年頃の仏領インドシナ南部(現ベトナム)にて、15歳のフランス人少女と中国人青年の狂おしい愛を描いた物語。
著者は、同じ題材、モチーフを繰り返し登用した、自伝的ともいわれる作品を幾つか残しているようで、本書も1984年に発表され、映画化もされて有名な「愛人(ラマン)」と深く結び付く作品とのこと。(訳者の解説によると、テーマ性など全く異なっているのでリメイクではないという指摘です)
でもむしろ、自伝、告白ものというよりは、反、いや、超自伝みたいな印象を受けるのです。 記憶の改竄ものっていうか・・ 濃密なエキゾチシズムのせいかもしれないんだけれど、そこはかとなく幻影的で、虚構めいて感じられる空間なのです。 “自伝的”といわれるデュラスの世界は、歴史的、地理的背景や、登場人物の肖像など、無造作(あるいは故意?)に次々と矛盾させたり変形させたりしている節があるらしく、“それらの集積の中に、自らを消し去ろうと望んでいるかのよう”だという一文を解説の中に見つけて、あ〜、わかるなぁ〜と思ってしまった。 著者の作品はこれが初めてなので、知ったような口きいては無恥にもほどがあるけども、なぜか不思議とこの一冊だけでも、そんな印象が残るのです。
登場人物たちは、いつも静かに“泣いてる”のです。 泣きながら笑っていたり、笑いながら泣いていたり。 頽廃的な香りが揺蕩い、“絶望のワルツ”が流れている・・ずっと。 そんな情景が、短いセンテンスに区切られた淡々とした筆致で、更には、第三者の目線としてのカメラアングルで描かれることによって、詩情豊かでありながら、センチメンタルに陥ることなく、どこか突き放した硬質な気配を纏って、読む者の心を締めつけるのです。


北の愛人
マルグリット デュラス
河出書房新社 1996-10 (文庫)
関連作品いろいろ
★★
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