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遊郭のはなし / 長島槇子
吉原・江戸町の格式高い遊女屋、“百燈楼”という大楼に伝わる怪談話。 妓夫、女将、内芸者、幇間、遣手、禿、花魁・・たちが入れ替わるように語り手となって、一見の客を案内し、もてなす行程を再現しながら、遊郭の七不思議を一つ一つ明かしていく。 そのうちに客は段々と抜けられない闇に落ちていく・・といった構成の連作長編。 松井今朝子さんの「吉原手引草」のような趣向で、吉原ツアー化け物屋敷バージョンっぽい感じ。
郭は魔窟。 妓楼は伏魔殿。 自害や心中、折檻で責め殺されたり、火事や疫病で非業の死を遂げた娼妓たちの幽魂が彷徨う郷。 何が出たっておかしくないといわれる江戸の遊郭は、怪異譚の聖地さながら幽霊との相性が抜群。 さらに幽霊沙汰は、妓楼に箔が付くとばかり、自ら噂を広める女将もいたとかいないとか・・
郭言葉や隠語をふんだんに使っていても全く鼻につかないし、解説も親切なのに煩わしくない。 張りと意気地の裏側に切々と流れる哀調。 嘘を買うのが通人といわれる遊郭の仁義。 見栄や粋で塗り固められた郭情緒が、滴るほどコアに描かれていたと思う。
文章が殆ど長唄調で構成されてるのも面白かった。 道で軍艦マーチに歩調が合っちゃって決まり悪くなるのに近いかも。 読書中、脳内に長唄が流れ続けているみたいで、なんだかこそばゆかったし。
途中までは面白かったんだよな〜。 すんごく喰いついて読んでた。 短篇毎に紹介される説話めいた怪談もそれぞれよかった。 後半になると短篇同士がリンクしていくような“予感”がして、パズルのピースが揃うと一枚の大きな怪談絵巻が・・って、期待を膨らませ過ぎちゃったのもいけなかったんだけど。 思ったよりもピースの収束感がなくて・・勝手だよなぁ。読者って。っじゃなくて、わたしって;;

以下、未読の方は読まないで! 備忘録です。
作中の“百燈楼”に伝わるという七不思議。 これは長島さんのオリジナルなの?(だったら神) それとも伝承を踏まえたもの?(それでも稀有な職人です)
ちょっと調べたくらいではわからなかったので書きとめておきます。 気になる。
【赤い櫛】 赤い櫛が落ちているのを見かけても、手に取ったり、拾い上げたりしてはいけない。 拾った者は必ず命を落とす。
【八幡の鏡】 使わない鏡を置いたままにしておくと、映った空間が取り込まれ、鏡の中にあるはずのない世界が生まれる。
【遣手猫】 色気の抜けない遣手婆が猫に化けて客に媚を売るとか、年老いた猫が遣手に化けて客に色目を使うとか・・
【鼠の道中】 妓楼に巣食う鼠は、食べられない小間物なども引いていき、集めた綺麗な小間物で飾り立て、花魁道中の真似事をするという。
【無常桜】 咲いたそばから散るという枝垂れ桜の名木。 花魁になれないままに若死にした禿や新造の霊魂が宿っているという。
【木魂太夫】 妓楼に棲む声だけの主。 古の太夫の変化だという。 滅多に現れないが気ままに出没し、人を助けたり惑わせたりする。
【一つ目の禿】 古道具が一つ目の子供に化けたおばけ。 遊郭では場所がらか禿に化けるという。 赤いべべ着て手鞠唄を口ずさみながら生首を鞠の代わりに突いているとも。
番外【紙縒の犬】 相手から来た文を裂いて紙縒りに縒って犬をつくり、飾っておく。 待ち人を呼び寄せるための娼妓のおまじない。


遊郭(さと)のはなし
長島 槇子
メディアファクトリー 2008-05 (単行本)
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