マジック・フォー・ビギナーズ / ケリー・リンク
[柴田元幸 訳] リンク初体験。9篇の短篇集。同系(?)ともいわれているジュディ・バドニッツの「空中スキップ」は面白かったけど、自分にはチョト毒っ気というか、殺伐とした気配が強すぎると思う部分もあった。 リンクはより寓話的で、この一冊で定義づけるのは軽率だけど、ずっとずっと瑞々しく、毒々しい印象は全く受けなかった。透明感とさえ思う。切ないとさえ・・ 気色悪いし、不気味だし、妙ちくりんな事この上ないのに、人々のささやかな切実さが詰まっていて、痛くて不器用な可笑しみや、泣きたくなるような可愛らしさ・・そんなものたちで溢れた世界に映るのが不思議で、この著者魔法使いなんじゃないかとマジで思う。でも人様に気軽に薦めることは躊躇われる。激しく読者を選ぶタイプの作品だろうなってことも理解できる。
柴田さんが解説で“ありきたりな素材を解体する”という表現を使っていた。ホント、ひとつひとつのディテールに絶妙のセンスを振りまきながら、分解と再構築を繰り返していくかのよう。ごくごく普通の日常からズレていくんだけど、そのズレた世界を完全に構築しようとはしないで、ひたすらズレ続けていくような・・プロットそのものがまるで物語を壊そうとしているみたいな。でもそんなへんてこりんな空間の中から、人々の声が水際立って届けられる感じ。痛切なんだけど、不気味可愛い笑いでくるんじゃってて、なんかこう、どこかシャイな気配がして堪らない。
「妖精のハンドバッグ」は、わたしにとって今年一番の短篇だったかも。「猫の皮」や「マジック・フォー・ビギナーズ」も大好き。「石の動物」を読んでいた時、ちょっとだけ、ヴィアンの「うたかたの日々」の不可思議な感覚を思い出したり、「猫の皮」では、いしいしんじさんの世界をふと思い浮かべたりもしたかな。人間のコードでは解読不明な「大砲」に至っては、おそらくはゾンビコードで書かれたものと思われ^^ 年の瀬に素敵な本が読めました。


マジック・フォー・ビギナーズ
ケリー リンク
早川書房 2007-07 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★★
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