雨を見たか / 宇江佐真理
髪結い伊三次シリーズの7作目。 伊与太坊が2歳になった。 まぁ〜ほんとにこれ・・今、一番可愛い時でないか? 伊三次とお文と伊与太の3人家族が、慎ましくも幸せそうで、このシリーズに愛着を持つわたしにとっては、なにより微笑ましくそしてホッとさせられる。
花形の辰巳芸者であったお文も三十路を迎え、職場での立場に戸惑いを覚えはじめたりしている。 一方伊三次も、自分を慕っていた龍之介坊が見習い同心となり、武士と町人という立場の違いや主従関係が顔をもたげ始めたことに一抹の寂しさを覚えている。 そんな仕事での気持ちのモヤモヤも家庭の中で柔らかく浄化されていく。 その描き方が実によいっす。 さっぱりしてるのにホロっとくるような。
そして前作に続き、龍之進(龍之介改め)がもうひとりの主役。 もともとこのシリーズは全てが伊三次視点で描かれているわけではないのだけれど、宇江佐さんは龍之進の成長物語にこれからしばらくは力を入れられるのではないかと思う。 本所無頼派を追う見習い同心組の葛藤は、もはや長編の様相を呈しているし。 思春期独特の強烈な自意識と本来持った真っ直ぐな心とが、今、ぶつかり合っている真っ最中の龍之進なのだった。 いつか伊与太坊もこんなに大きくなって小憎らしくなってしまうのかなぁ〜と思うと寂しいなぁ・・気が早いよ。
今回は1篇毎の完結性が緩やかな気もするかな。 でも短編毎に、江戸市井様々な人情の機微に触れることができるのは云うまでもない。


雨を見たか −髪結い伊三次捕物余話−
宇江佐 真理
文藝春秋 2006-11 (単行本)
宇江佐真理さんの髪結い伊三次シリーズ
★★★
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