巴之丞鹿の子 / 近藤史恵
[副題:猿若町捕物帳] シリーズ一作目。“巴之丞鹿の子”という人気女形の名前のついた帯揚げが当世流行りの江戸市井。それを身につけた娘が次々に殺される。事件を追うのは南町奉行所同心の玉島千蔭。甘いものと遊女が何よりの苦手という硬派な漢。しかしいまいちキャラ立ちが・・加えて筋運びに精彩がなかったかなぁ。ほろ苦い人情ものでさらりと読み易くはあった。
江戸三座が浅草猿若町に移転してからの芝居町界隈。なので天保の改革以降の、幕末に近づきつつある時勢が舞台となっている模様。芝居もより倒錯し、妖気を放つような艶やかさへと流れ、町方のファッションも、地味極まる縞柄をぞろりと着こなすのが粋という時代。そんな屈折した世の中の頽廃の香りがほんのりと織り込まれていたかな・・いないかな・・いたかな・・くらい。
河岸見世の女郎張りな総籬の花魁って・・ちょっ、イメージが;; それともあれが末期江戸風なの?? ところどころ・・う〜ん、ちょっとした細部の考証がしっくりこないと萎えちゃう自分は重症。せっかく背景が魅力的な時代なのだから、丹念に描いたら、すんごく物語に映えそうな気がするんだけど。でも、似せ若衆の趣向とか、浅草奥山の矢場とか、色を殺してデザインする当世風な渋好みとか・・雰囲気はぽつんぽつんと伝わってくる。目立たないところに粋を尽くす末期江戸っ子の心意気が詰まったような帯揚げがキーアイテムになっているのも憎い演出。町方は芝居町から流行を受け取って、芝居町は町方から狂言の趣向を取り入れる・・持ちつ持たれつ練り込まれてきた江戸文化が仄かに匂い立つ・・とまではいかないんだよなぁ。
何のかんの言いつつも、近藤さん、最近めきめき腕を上げてるので、このシリーズは追う気満々。巴之丞と梅が枝花魁の出生の秘密なんかも紐解かれていくのかな。


巴之丞鹿の子 −猿若町捕物帳−
近藤 史恵
幻冬舎 2001-10 (文庫)
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