ワカタケル大王 / 黒岩重吾
久々の古代。日本史に現われた最初の個性的人格といわれ、日本書紀の中で“大悪にして有徳”と評されたというワカタケル大王とは、第21代雄略天皇のこと。“倭の五王”最後を飾る“武”である。
大和朝廷による平定がほぼ完了したとはいえ、まだまだ地方の有力豪族との連合国家的な性格を強く残していた時代。専制王者への野望を胸に、ワカタケル大王が目指した中央集権化は、後の官司制度の萌芽となったといわれている。
なんといっても強烈な個性。武勇に秀で、知識欲も旺盛。勇猛にして暴虐。允恭大王死後、5人の王子と従兄弟王による血みどろの大王位争いを勝ち抜き、巨大豪族の権威を失墜せしめるべく政権抗争を繰り広げていく激しい生き様を人間味豊かに描きながら、五世紀半ばの時代の息吹を運んでくれる。
古事記の解説本を斜め読みした程度の薄ら知識はあったのだけど、古事記仕様のお伽噺系エピソードは全く出てこないし、一見何の変哲もないような粗筋が、深い考証と洞察に基づいた陰影を施されて料理され、躍動感溢れる歴史ロマンへと生まれ変わる。多くの記録により時代の実情が見え始める以前とはとても思えないリアリティ・・って、こら〜黒岩重吾さんを何方と心得るか。
宋王朝と朝鮮半島諸国と倭国。当時の国際情勢がとても興味深い。民族の基盤がまだ流動的なためか、中世よりもよほど国際的に映る。宋王朝の冊封体制を巡って優位に立とうとする各国の思惑や、高句麗、百済、新羅の緊張関係の中に組み込まれ、利用される倭国。海に守られのんびりとした気風の後進国に甘んずることを是とせず、新時代を先取りしようと、熱い血を滾らせた異端の革命児が、黒岩さんの手によって爛々と蘇る。


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黒岩 重吾
文藝春秋 2003-12 (文庫)
黒岩重吾さんの作品いろいろ
★★★
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