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大人のための残酷童話 / 倉橋由美子
2009.03.21 Saturday
大人のための残酷童話 倉橋 由美子 新潮社 1998-07 (文庫) ★★ |
大人の童話系作品の定番中の定番です。 走りといってもいいのでしょうか。“後に来る者の特権”で、この手の作品は、今や多くの秀作が世に出回っていますが、色褪せ感はありません。
アンデルセンやグリム童話、日本の昔話、ギリシア神話にイギリスや中国の民話など、世界各地の古典的お伽噺をモチーフにした26篇の創作童話集。 毒とエロスのフレーバーを効かせ、大人向けにアレンジされていますが、小手先のテクニックではない、骨太で削ぎ落とされた印象を残します。
情で解決しないところや、自業自得の精神を基盤に構築される物語世界は、残酷ではあるけれど、ストンと胸に落ちるような率直さがあります。 そんな昔話の持つ魅力を濃厚なエッセンスとして抽出したような作品集。
一篇毎に“教訓”が付記されているのですが、これが人を喰ったような一台詞で、読んでいくうちに思わずハマります。 誰でも知っている話が結構含まれているので、換骨奪胎の手際の鮮やかさを堪能するのも楽しいです。
「異説かちかち山」の怜悧な残酷さがあまりに鮮烈でした。 メドゥサの首に材を取った「ゴルゴーンの首」のウィットと皮肉も好きでした。 谷崎潤一郎の「春琴抄」を下敷きにした「鏡を見た王女」の苦い暗さも忘れなれない・・
どれも極めて後味の悪い物語ばかりなのに、嫌悪感が残らないのが思い返せば不思議なのですが、不合理なものを感じさせない整然とした摂理に裏打ちされている・・そういうことなのかな。
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