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せどり男爵数奇譚 / 梶山季之
せどりの名人であることから“せどり男爵”の異名を持つ初老の紳士が、古書業界という魔境を華麗に泳ぎ回りながら遭遇してきた古書にまつわる数々の奇譚や秘話が集められています。せどり男爵が、とある文士に語って聞かせるという体裁で綴られていく連作短篇集。 生き馬の目を抜く海千山千の業界に巣食う魔に憑かれた人々の狂気と紙一重の情熱が蠢いていて、そこにはふと哀愁が見え隠れし・・ 異境を満喫して参りました〜。
“せどり”というのは、ある店で安く買った古本を別の店で高く売って利ざやを稼ぐことを生業とした人種を差す古本業界の用語・・というのは何となく知っていましたが、お金儲けと、掘り出し物を見つける醍醐味との相乗効果から、一度ハマったら抜けられない、ロマンを掻き立てられずにはいられない稼業なのだろうなぁ〜というのが、読んでいてジンジン伝わってきます。
金の卵となる端本をクズ屋の立場で発掘した時の快感や、竈の焚きつけや便所の目張りにされている光悦本を痛恨の想いで眺めたり、蔵書票に託された謎解き、シェークスピアの初版本をめぐってユダヤの豪商と渡り合ったり、本に対する偏執的な愛着を持ったビブリオクレプトマニアによる書物破壊や書盗に絡んだ事件、圧巻は装丁の虜となった男の妄執・・ せどり男爵の武勇伝のような調子で始ったのが、段々と常軌を逸した愛書家、蒐集狂たちの奏でる狂想曲さながら、ホラー色を強めていく展開にも惹き込まれ、ゾクゾクさせられます。
1970年代の作品なのですね。勿論、古書を取り巻く現状は、当時から鑑みて大きく変化しているんだと思うんですけど、本好きにとっては、本書こそまさに、古くなってなお価値を増していくお宝本かもしれません。 梶山さんは社会派のルポなどもお書きになっていた方らしいのですが(無知;;)、世の中を見据えようとする冴えてクールな眼差しというか、ジャーナリスト的感性が作品の中にも顕れているような印象です。そしてそれは、決して古さを感じさせません。


せどり男爵数奇譚
梶山 季之
筑摩書房 2000-06 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★
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