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街の灯 / 北村薫
ベッキーさんシリーズの完結編「鷺と雪」が刊行されたのですね。図書館の予約に出遅れてしまいました;; その間に再読しておこうかなっと思い立って、久しぶりに手にした1作目。やっぱり大好き♪ ガーリッシュ・ミステリの金字塔です。と勝手に思っています。
チャップリンが来日し、犬養首相が暗殺された昭和8年という時代を生きる上流階級のご令嬢、花村英子と、そのお抱え運転手である男装の麗人、ベッキーさんこと別宮みつ子のコンビが、身の回りの謎や殺人事件の推理に挑む連作集。
震災からの復興を果たした帝都東京。華やぎを誇る銀座界隈。微かにきな臭い兆しを纏い始めた社会情勢も、まだ女学生やモダンガールの身辺を脅かすには至っておらず、文化・文明を謳歌する気風には、春風の薫りを運んでくるかのようなキラキラとした時代の息吹を感じます。
本の達人である北村さんの映し出す昭和初期の風景は、視界の隅々に至るまで真摯な考証によって支えれていて、まるで見てきたかのような鮮度と繊細さでもって包み込んでくれます。本筋以外の背景描写や文芸トリビアでふんだんに遊びながら、気づけば本格ミステリ部分と絶妙に連携しているという贅沢な作風は、北村さんの真骨頂かなって思います。
19世紀のイギリスにおいて、上流階級のスノビズムを完膚なきまでに叩いた作家であったサッカレーの「虚栄の市」のヒロインに重ね合わせて、別宮(べっく)みつ子を“ベッキーさん”と呼ぶ英子なのですが、それは彼女の心に灯った嘘のないささやかな敬意から生まれた尊称であることが、物語全体に隠喩として漂い続けているんです。薄っぺらい小奇麗なものを描いているのではないことが、じわじわと、時にズキンと伝わってきます。ナポレオンでさえ振り落とされた時代という駻馬。何を拠り所に何を信じて生きたらいいのか・・彼女たちに待ち受ける未来を思うと、胸がいっぱいになってしまいます。
でもでも〜 ベッキーさんが侯爵家の桐原大尉と見つめ合うシーンでは、脳内を満開の白薔薇が飛び交ってしまったわたし。愛すべき凡人の雅吉兄さんもさり気なくお気に入りw


街の灯
北村 薫
文藝春秋 2006-05 (文庫)
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★★★★★
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