当世白浪気質 / 杉山小弥花
[全3巻] GHQ占領下の昭和20年代。光と闇とが渾然一体となった混乱期の東京を舞台に、泥臭く、切実に、時に自棄っぱちなほど颯爽と、そして粋がって・・ 命を貪るように生きたアブレゲール(戦後派)たちが、格好良かったなぁ。
大仰なほど生真面目に愛や社会や人生を語るクサさの中に、本質を突く鋭さが燃え立ち、と同時に、軽妙な台詞回しとテンポよく転がるストーリー展開とが、絶妙なブレンドで配合された快作でした〜。
美術品泥棒を生業とする虎之助が、お宝目当てに潜り込んだ山奥の隠れ里で、生き神として白狼の贄に捧げられようとしていた娘の千越を思いがけず救出してしまいます。職人気質で理屈っぽくて男気があって・・すんごく面倒臭いヤツな虎之助と、霊感少女の千越が、美術品絡みの厄介事に巻き込まれて、擦った揉んだのドタバタ劇を繰り広げる一話完結型の連作コメディとしても楽しいのですが、やっぱり全3巻(3〜4年かな?)通して、なかなか育まれていかない2人の愛の行方を追っかけてしまいます・・
シベリアからの帰還兵である虎之助は、僅かな迷いさえ生じる余地のない完全なるものに圧倒されていなければ壊れてしまうと感じるほどの深い心の闇を抱えています。千越の汚れなき神聖にその光を見出した虎之助は、千越をひとりの娘として愛するという世俗的な恵みと引き換えに、自身のアイデンティティが保てなくなるのではないかという怯えの中で沈吟し続けています。虎之助の願いのままでありたい。けれど現の女として愛され生きていきたいと希求する心を持て余す千越。そんな2人の同居生活は、もどかしく、胸を裂くように切なく、ふと甘やかな・・ぎりぎりのバランスの上に立って、儚く揺れ動く陽炎のようでありながら、それでいて生きることの実感を熱い血潮のように迸らせて止みません。
美術品の蘊蓄もあり、文化、風俗をふんだんに盛り込んだ舞台背景も魅力的でした。時代特有の特殊用語もこれでもかってくらい盛り込まれ、そして鬼のような脚注&フォローも、コレ、同じ事を小説でやってしまうと、野暮ったくなるんですが、漫画というアドバンテージを活かして実にスマートにやってのけています。


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