ジョーカー・ゲーム / 柳広司
かっけーなぁ。この確信犯的ライトさが、思いのほかフィットしました。第二次大戦前に創設された、スパイ養成学校、通称“D機関”に所属する、スパイ候補生たちの暗躍を描いた連作集です。陸軍中野学校が下敷きになっているようなんですが、不勉強なわたしとしては、なんだかもうSF感覚で、疾風のように読み抜けました。
国のために命を捨てることが美徳とされた戦時下にあって、武士道精神を真っ向から切り捨てる冷徹な論理性に裏打ちされた合理主義。高度な状況判断の下に、生き続けることを要求される男たち。無名性が即ち己の証。そこにはロマンすらない。圧倒的な孤独を引き受ける究極のニヒリスト。ファシズムの時の彼方に息をひそめるアウトサイダーたちにゾクゾクと痺れつつ、もう一方で、体制側から彼らを眺め、戸惑い、煩悶する者や、人間味を捨て去ることができず、舞台の外へ退けていく者も、また、よい。
なるほど! スタイリッシュという形容がぴったりです。軽やかな渋みとでもいいましょうか。血生臭さや泥臭さのない、クールなスパイ・ミステリなんですが、小粒でピリッと引き締まった端整な構成力に加え、上海やロンドンに舞台を移したり、当時の世界情勢や政治的背景をシニカルに掬い取るスパイスも機能して、意外にもスケールと奥行きを感じさせる作品なんです。でも敢えてこれ見よがしには描かない。いつか柳広司さんの本気を見たい・・ような。でもそれは是非、別の作品でお願いします。本シリーズは、このスマートさを保ち続けて欲しい・・


ジョーカー・ゲーム
柳 広司
角川グループパブリッシング 2008-08 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★★
| comments(2) | trackbacks(1) |
C O M M E N T
軽やかな渋み!それです!
気持ちのいい表現にスッキリしました。
| 藍色 | 2009/04/28 |

颯爽とした渋み・・とか思わず書こうとして、
矛盾が激しすぎてることに気づき、止めときました^^

でも、ほんっっとそんな感じなんですもん!
| susu | 2009/04/29 |









http://favorite-book.jugem.jp/trackback/468
ジョーカー・ゲーム 柳広司
陸軍内に設立されたスパイ養成学校"D機関"。常人離れした12人の精鋭。 彼らを率いるカリスマ結城中佐の悪魔的な魅力。傑作スパイ・ミステ...
| 粋な提案 | 2009/04/28 |