おのごろじま / 日和聡子
“オノゴロ島”というのは、イザナギとイザナミによる国生み神生みの舞台となった島でした。 現代詩人である日和さんの手によって、古の創生譚が転生したかのように蘇生しています。 その瑞々しさと、得もいわれぬ慈しみで、たっぷりと魅了してくれました。 詩的な才筆を残しつつの散文調。それでいて、知的操作を感じさせない迸りがあって。 紡ぎ出された言葉の世界に、とても惹かれました。
大らかで、めそめそしたところを感じさせない神話的世界観と、螺旋のように織り成されていく、生彩に富んだ物語の息吹き。 濃緑の松林、陽の降りそそぐ砂浜、海の底の岩屋、大蛇の絡まる椎の古木、天女の歌声、這虫、貴鳩、鮫屋、椿首、苔草、三葉虫、昔蜻蛉、石塊・・ 地表に根ざす生きとし生けるものらは、生まれ、交わり、朽ちていく。 忌みも、焦がれも、よろこびも、かなしみも、豊穣な海と大地に染み渡り、包まれ、揉み拉かれ、呑み込まれ、寄せては返し、新しい命の萌芽へと繋がっていく。 何ものも、その帰結を左右することのできない清々しさ。 賛歌でも郷愁でもない叙事的世界が、海と山の恵みの中で悠然と照り映えるのでした。
風に感応するような涼やかさと共に、生態系や輪廻のうねりが胎動し始めた予兆に満ちて・・そんな規範をも軽々と超えてしまいそうな、たおやかな感覚の残滓が、まだ胸の中に波打っている心地です。


おのごろじま
日和 聡子
幻戯書房 2007-11 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★★
| comments(0) | trackbacks(0) |
C O M M E N T








http://favorite-book.jugem.jp/trackback/491