箱男 / 安部公房
むずかしい・・ 理屈で読み進めることは到底出来ず、かといって、感覚で捉えようにも、わたしのキャパを遥かに超えてます。それなのに、転がるようなストーリーの尻尾を追って、ミステリアスな罠の中へ落ちていく快感。 ちょっと外国のスリップストリーム小説っぽい。ダンディで洒落てる。写真に添えられた言葉などは、詩のように美しい。 海のある地方都市。彩度の低い風景の静かで硬い呼吸音。
読み終えてみると、表と裏が地続きに繋がっていた気がしました。メビウスの輪の中に迷い込んでしまっていたんだな・・って、わたしなりの着地点。“外の世界を覗いている本物の箱男”の手記で始ったはずなのに、どんな立ち位置の、誰が、何処に向かって記している物語なのか、目まぐるしく混乱を来たしてゆきます。 する行為とされる行為、本物と贋物、外の世界と内の世界・・ 視点の違いでいとも容易く反転する不確かさ。 錯綜が錯綜を呼び、能動と受動、絶対と相対、主観と客観の狭間のトワイライトゾーンを彷徨う放浪者であり続けるばかりのわたし。
真実は無数に存在し、人は意識的、無意識的に、感じたいもの、信じたいものだけを取捨選択して生きているに過ぎなくて・・ 困ったことに、味わったばかりの眩暈や不如意を求めて、またおずおずと手を伸ばしたくなってくるのです。

<付記>
某コミュニティのコメントを拝見していて、自分のもやもやの正体を的確に言い表してくださっている方がおられました。どうして気づけないんだろう・・;; 的外れな感想を丸ごと削除したくなったけど、戒めとして敢えてこのままで。


箱男
安部 公房
新潮社 1982-10 (文庫)
関連作品いろいろ
★★
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