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鷺と雪 / 北村薫
上流階級の令嬢である英子と専属運転手のベッキーさんを主役に配した昭和初期ミステリのシリーズ3作目にして完結作。 予約にうっかり出遅れた時は、呪いの言葉を吐きそうになったけれども、タイムリーに図書館の順番が回ってきました♪ 今頃、爆発してるかしら・・予約。 ふふふふふふふ・・・・ (←鬼畜) でも受賞本狙いで手に取られる方も、よかったら是非、1作目から読んでみて欲しいなぁ。 間違いなく流れがあるから。
はぁー。終わっちゃった。 唐突なラストが凄味を放ってるんだけど、読み終えて時間が経った今は、なんともいえないカタルシスです。 思えば、大人でも子供でもない少女期の煌めきと、戦争前夜のほんの束の間の華やぎを活写した三部作でした。 そのどちらもに否応なく終わりが訪れる時、物語の幕が引かれるのは不可避だったかもしれません。 静かな幕切れではありません。 女性への目覚めと、時代の刃を鮮烈な断面で突きつけられる劇的な(そしてちょっと甘美な)終章は、むしろこのシリーズに相応しかったような気がしています。
ベッキーさんがさり気ないヒントを提示して、英子が推理する。英子は狂言回しで真の名探偵はベッキーさんというパターンを踏襲しながら、主に日常の謎を解決していくシリーズですが、今回のミステリ要素は少し控えめかな。 それより、戦争に対するメッセージ性がより感覚的になっていて、明確な言葉が少ない分、ずっと深く刺さるように思いました。 所々に配置される暗示的な言葉は、物語のクライマックスへ向けて効果的に連動し、暗澹とした兆しを滲ませつつ、読む者の心に不安を呼び起させていきます。 それだけに、英子やベッキーさんの清冽さや、雅吉兄さんの人畜無害な温もりが際立ってくる・・切ない痛みとともに。
漫然と押し流される者、抗う者、諦観の中に沈む者、毅然と受け止めようとする者、切り開こうと立ち上がる者、それらが綯い交ぜになった割り切れさに苛まれる者・・ 荒波の予兆の中で、あまりにも無力な個人だけれど、様々な想いを胸に抱えた人々が間違えなく生きていたという当然の事実に、ハッとさせられるような瑞々しさです。 決して絵葉書の引き写しではない時代の空気が、隅々まで薫ります。


鷺と雪
北村 薫
文藝春秋 2009-04 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★
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