幻想博物誌 / 澁澤龍彦
近代以前、地球上を跋扈していた(?)古今東西の不思議な生き物を集め、そのフォルムや、起源、系譜、シンボリズム的な役割などを講じた随筆集です。 ワンダーランドを回遊する愉楽を味わいました♪
古代、中世の学者たちによって、大真面目に主張される珍説、奇説の数々が、科学と引き換えに幻視の翼をもがれた現代人には、遊び心の粋として極上の輝きを放って蘇るのです。 ちょっぴりアイロニカルな部分も含めて最高の贈り物です。
スフィンクスのように象徴的な生き物、ゴルゴンのように神話的な生き物、実存と空想が錯綜していく象や犀、フェニックスやバジリスクスのように実在すると信じられた生き物など。 植物、虫、貝、魚、爬虫類、鳥、哺乳類といった明確な分類が体系的に確立されていない時代、種の混淆という果て無き想像力が躍動しているように思えました。 そんな中でわたしは、植物と動物のミックスバージョンである、スキタイの羊や、スコットランドの植物鳥伝説が好きです。
著者の愛するプリニウスの「博物誌」から最も多く引用されていて、その中でお気に入りなのが、蝶はキャベツの葉の上に落ちた露から生まれるという説と、海胆の殻の化石(その昔、ガリア人が海胆の殻を崇拝していたので化石が沢山発見されたらしい)を蛇の卵であるとする説など^^
ギリシア神話のこぼれ話的に派生するエピソードが様々な不思議生物と連携している辺りも楽しかったです。 特に、ペルセウスによって砂浜に置かれたメドゥーサの首に触れた海藻が石に変わって珊瑚が生まれたという説が印象的です。
オオクニヌシの片腕となって出雲の国造りを助けた小人の神のスクナビコナを虫神とする仮説(国文学者の益田勝実氏による説だそうです)にも惹かれました。“ヒムシ(蛹?)の皮を剥いで作った着物を着ていた” “最後に粟の茎によじのぼって、弾かれて常世の国に渡った”という伝承と綺麗に照応します。
あと、この前読んだ「琥珀捕り」にも出てきた琥珀の起源を大山猫の尿とする説に吸い寄せられました! プリニウス曰く・・・
大山猫の尿は、排出されると結晶し凝固して、柘榴石によく似た、燃えるような輝きを放つ石になる。これはリュンクリウム(大山猫石)と呼ばれる。 (中略) 大山猫は、自分の尿が何になるかをよく知っていて、盗まれないように、これを地中に隠す。こうすれば、もっと早く凝固するのである。
プリニウス〜www 好き。


幻想博物誌
澁澤 龍彦
河出書房新社 1983-10 (文庫)
澁澤龍彦さんの作品いろいろ
★★★★
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C O M M E N T
こんにちは。
澁澤龍彦は心の師匠です。
彼と出逢ったのがこの著作でした。
懐かしい。
 
この手の作品がお好きならボルヘス『幻獣辞典』をお勧めします。
青土社から刊行されています。
これもなかなか面白い本ですよ。
是非是非ご一読を〜。
| 森山樹 | 2009/08/15 |

こんばんわ〜。
森山さんのお師匠さんでしたかー^^
わたしも弟子の末席に加えて頂きたいです。
まだまだ弟子心得補佐代理見習いくらいですけれども;;

澁澤龍彦いいですよねぇ。
次回は「私のプリニウス」を読みたいなって思ってるんですw
またまた魅惑の本をご紹介くださり、ありがとうございます。
ボルヘスの「幻獣辞典」ですね! φ( ̄ー ̄ )メモメモ
| susu | 2009/08/15 |









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