※ ネタバレご注意を ※

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - |
おさがしの本は / 門井慶喜
N市立図書館のレファレンスカウンター担当職員である和久山隆彦。 利用者の持ち込むリクエストをクリアするべく、丹念な調査を重ね、同僚たちを交えて奮闘する日常業務を追った連作短篇集。
文学トリビアを駆使し“本探し”のために捧げられたミステリといった趣きです。 北村薫さんがお好きそうな^^ でも、ピリっとシビアで鋭い作者の眼差しを背後に感じる作品でもあったなぁ。 書物や読書や図書館への手放しの賛歌ではないという新機軸が、逆に本好きを戸惑わせ、敵に回す恐れも。 わたしはこういうの、ニヤリです。
司書スキルや図書館の内幕など、食いつかずにはいられない素材がまず嬉しいし、外来語の輸入の歴史とか、江戸庶民と富士山の関係性とか、問題解決の過程で差し挟まれる論考にワクワクしたり。 キーとなる書物や手掛かりを得るための文献などは全て図書館に架蔵され実在するものであって、謎解き部分に架空の要素は恐らく皆無。 一篇一篇はそんな感じで衒学と日常の交々がバランスよく配置され、全篇を俯瞰してみると、図書館論とでもいうべきか、行政機構や地方社会の根源的な問題に食い込んでいるといった印象もあり。
本の虫のわたしにとっては、図書館なくしては夜も日も明けないという想いのある一方で、体のいい無料貸本屋として都合よく甘えさせてもらうばかりで、特に新刊本をごっそり借り受ける時などは、何とはなしに有難過ぎて申し訳ない気持ちさえ芽生えることも正直あります。 もちろん図書館廃止論は極論だけど、幾ばくかの断片的な真実に穿たれる想いが残りました。 それに対抗する図書館存続論も、感情に訴えない理路整然とした弁論が実にいい。
視点がフェアなんですよね。 なので、作者の意見というよりは、ディベートの延長線上って感じです。 作者のメッセージと思えたのは“書物は身を助けるが書物に溺れるな”ということかな。 うっ、これも耳痛;;
主人公の和久山隆彦は、染みついた役人気質とやや皮肉屋なところはあるけれども、上昇志向を持った骨のある青年で好感が持てました。 予定調和とならずにしっくりこないラストも、個人的には評価。
あとねー。 尋常じゃない言葉遣いによって、しかつめらしい芝居めいた味付けがされているのも面白かったな。 “畢竟するに”とか“率爾ながら”とか知らねーよ^^; “けだし”とか“毫もない”とか“たらちねの〜”とか使わんし^^;


おさがしの本は
門井 慶喜
光文社 2009-07 (単行本)
関連作品いろいろ
★★
| comments(2) | trackbacks(2) |
スポンサーサイト
| - | - |
C O M M E N T
こんにちは。
こういう本の蘊蓄ミステリーは、この頃、やわらかめが多いので、久しぶりに楽しみました。
和久井が公務員としてどこまで出世するのかも、みてみたいですね(笑)
| かつき | 2009/09/01 |

かつきさん、はじめまして。
コメント&TBありがとうございます。

ほんと、口当たりのよい感じでは決してなかったのだけど、
和久山くんは、アンチヘタレみたいなところが逆に新鮮でした。
お役人界の室井さん(?)になって欲しいですね^^
会議室に風穴を開けてくれることを期待しちゃいます♪
| susu | 2009/09/01 |









トラックバック機能は終了しました。
『おさがしの本は』 門井慶喜
東京近郊の市立図書館に勤める和久井隆彦は、公務員歴7年、レファレンスカウンター歴3年。そろそろ理想と現実の差から日常業務に倦んでくる頃です。図書館への問い合わせに関する連作短編ミステリー。最初の2編は、その知識には驚きますが、ミステリーとしては凡庸に
| 猛読醉書 | 2009/09/01 |
門井慶喜『おさがしの本は』
おさがしの本は門井 慶喜光文社このアイテムの詳細を見る 今回は、門井慶喜『おさがしの本は』を紹介します。図書館を舞台とした本探しが中心的なテーマ。後半は、それに加えて、図書館存続か廃止かという話題も入ってくる。主人公は、図書館のレファレンス・カウンタ
| itchy1976の日記 | 2009/12/28 |