風流江戸雀 / 杉浦日向子
先ごろ、田辺聖子さんの「古典の森へ」を読んで、古川柳に感電するが如き有り様だったわたしにとって、本書は草の根分けても出逢いたかったような一冊でした。
柳多留などの古川柳を題材に、その馥郁たる世界が見事に“視覚化”され、川柳と戯画と物語が共鳴し、江戸庶民の瑣末な日常風景の粋が、ふくふくとした笑いの中に映し込まれています。
雪見、花見、夕涼、行水、蚊帳、紅葉見、火鉢・・ 風物詩と切っても切れない町屋の暮らし向きが、一掬の微苦笑を誘いつつ、しみじみと浮かび上がります。
川柳だけでは情景がイメージし辛いものも、あー、こんな風趣を詠んだ一句だったのかぁ〜と目ウロコぽろぽろ。 例えば・・
紅葉見と 聞いて内儀は 子をさずけ
紅葉見と託けて、吉原に繰り出すのが暗黙の了解事なんですね。 それを逆手にとった女房が、澄まして意趣返しをする図ですね^^ この題材から膨らませた小さな物語がまた秀逸で。 これが一番好きだったかなー。 脛っかじりの若旦那の話もお気に入り♪
ドライな物言いの中に琴線に触れる情緒が隠れていて、面映ゆげに顔を覗かせていたり、世知辛さをサックリと笑いに託す生きっぷりの格好よさ・・ 照れ屋でやせ我慢な江戸っ子たちが息衝く愛おしい句の数々が選び採られています。
少しばかり挙げてみると・・
雨やどり ごおんとついて 叱られる
明かぬ戸を 外で手伝う 夜そば売り
屁をひって おかしくもない 一人者
みんな見放すに 藪医の頼もしさ
ほととぎす 口舌の腰を 折って行き
あと、夫婦の機微で面白かったのがこれ。
朝帰り 命に別儀 ないばかり
朝帰り 首尾の良いのも へんなもの
対になって、ますます味が出ちゃってるのよね^^ 
因みに“日向子浮世絵”と題して、田辺聖子さんが序文を寄せられているのですが、目頭が熱くなりそうな名文で、日向子さんへの讃辞が送られています。 プチ情報ですが、再販の単行本の方は宮部みゆきさんが巻末エッセイを寄せられているらしく、そちらも素晴らしいんだとか。 読みたいなぁ〜。


風流江戸雀
杉浦 日向子
新潮社 1991-06 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★★
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