黒と白の猫 / 小沼丹
昭和39年から昭和56年まで17年にわたって、小沼丹がライフワークのように書き残した“大寺さんもの”と呼ばれる短篇群があります。 小沼文学の至宝とも白眉とも謳われながら、収録媒体がバラバラであった全12作を連作短篇集として一冊に集成したのが本書。
時を往還しながら身辺雑記風に点描されていく大寺さんの半生。 束の間人生を交差させたり、共に歳を重ねた人々や動植物への静かな追懐。 主人公に自己を投影させた半自伝的な位置づけにある物語のようですが、大寺さんと著者の間に全くべとついたものが介在することなく、淡々と悠然と訥々と綴られていく言葉には、だからこその深い陰影と、透徹した観察眼を経た極上のユーモアが漂います。
昔の漢が空気のように身に纏っていた風格と愛嬌を無造作に放出させているかのような大寺さん。 そのエモーショナルなリアクションに擽られまくりでした。わたし。
川は日夜流れるが如く、移ろいやすい人の世への慈愛に満ちた思索風景を追体験するうちに、読む者の心は潤い、弱った魂が一篇ずつ安らぎと精気を取り戻すような・・ そんな感慨に包まれます。 読み終えてしまうことが寂しくて堪らなかった。


黒と白の猫
小沼 丹
未知谷 2005-09 (単行本)
小沼丹さんの作品いろいろ
★★★
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