訪問者 / 恩田陸
山奥の湖畔に佇む古い洋館に、渦中の一族と、一人また一人とベルを鳴らす来客たちが集い、嵐に閉ざされた恐怖の数日間の火蓋が切られます。
若くして急死した映画監督の遺言書、一族の長子であった女性実業家の不審な死の謎、“訪問者に気を付けろ”という差出人不明の警告文、玄関に残された木彫りの象、戸外に放置された見知らぬ男の死体、先代の隠し遺産、故人の亡霊といった誘因が出揃い、外部と遮断された緊張感と不穏な気配の張り詰める中、クラシカルな推理劇が展開されていまきす。
作中にも象徴的に折り込まれている“群盲、象を撫でる”の故事のように、断片的な推理を手探りでつつき回しながらも、終盤には朧に全体像へと結集していくこの感じ・・ミステリの枠で括れるようなもやもや感のなさは久しぶりだったかな。
筋書きとしては至極オーソドックスですし、小ぢんまりとライトにまとめ上げる終盤は随分とお手柔らかではあるんですが、芝居がかった舞台設定やいわくありげな登場人物といったムード作り、舞台脚本を読んでいるような戯曲めいたシチュエーションに惹き込まれてしまいます。
疑心暗鬼に陥りながら互いに牽制し合いつつ、少しずつ手持ちのカードを切っていくような、それでいて一種独特の運命共同体的な連帯感といったクローズドでの奇妙な均衡を描かせたらやっぱり天下一品で、この現実味を削ぐ演出によって、ならではの恩田色に染め上げられています。
恩田さんはスタイルが確立されてますから、自分の場合は良くも悪くも作品に入っていく脳内回路が出来ちゃってる感じで、最近はどう評価していいのかよくわからなくなってます。 もう、好きなのだとしか言えないなぁ。


訪問者
恩田 陸
祥伝社 2009-05 (単行本)
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