浮世女房洒落日記 / 木内昇
作中作の趣向を利用して、江戸後期を生きた町屋の女房の“架空の手記”という遊びを含ませた作品に仕上げられています。 そのせいか後世の創作臭さが何処となく漂う気がするのもオツなんですよねぇ^^
神田のとある長屋の表店で、小間物屋の小商いをしていた一家の女房のお葛さん(27歳のちょい年増)の目を通して、世知辛くも微笑ましい長屋暮らしの由無し言が日めくりのように綴られています。 もうねぇ。古川柳や古典落語の風景そのまんまなんです。 “紅葉狩り、行ってくっかなぁ〜”ってキョドり気味の亭主が言い出した時は思い切り吹いてしまいました。(←「風流江戸雀」ご参照) カラッと小粋で温かくて・・笑う門に福が来ちゃってる感いっぱいです♪
帳面と睨めっこしては頭を揉み、家事に育児に精を出し、ぐーたら亭主の尻を叩き、日々、うつつに打たれて逞しくなっていくばかりのお葛さんですが、時には火事場見物で火消しの男っぷりにポッとなったり、お肌のお手入れは余念なく、甘味やお喋りの誘惑も尽きることがありません。 働き者の清さんと、お年頃のさえちゃんとの恋路の行方にヤキモキしたり、糸の切れた凧のような亭主へのぼやき節がまたよいんだなぁ^^ 喧嘩っ早くて忘れっぽい江戸っ子の吹き流しっぷりに怒れども怒れども笑いの種になるばかり。
四季折々の節句や諸行事、暦に合わせて市が立ち、季節によって様変わりする屋台や振り売りの声・・ 春夏秋冬の風物詩を愛でる当たり前の感覚が、慎ましくも活気に満ちた営みの中にキリッと溶け込んでいます。 特別なことが起こるわけじゃないんだけど、毎日の他愛のない喜怒哀楽と共に、人の情が廻り廻っているのが見えるようだ・・ 身過ぎ世過ぎの勘どころがしっかりと埋め込まれているような。
泣き笑いしながらほっこり読めて、じんわりと滋味深い。 「茗荷谷の猫」に続いて大好きな一冊となりました〜。


浮世女房洒落日記
木内 昇
ソニーマガジンズ 2008-12 (単行本)
関連作品いろいろ
★★★★
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