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奇術師 / クリストファー・プリースト
[古沢嘉通 訳] プリーストを読むのは「魔法」に次いで2作目なのだけど、SF的な小道具を洗練された幻想文学の中にシンボリックに映し込む手法とか、地に足のついた日常が眩惑的な空気に浸食されていく不穏感とか、読者を惑わす騙りの技巧とか・・ プリースト色がちょっと見えてきたかも。 なんて。 独特な肌触りに改めて感じ入りました。
19世紀末から20世紀初頭に“瞬間移動”のマジックで一世を風靡した二人の英国人イリュージョニスト。 長きに渡り敵対していた彼らが残した著書と日記を読み進める新聞記者のアンドルー。 現代を生きる外側の語り手の運命が作中テキストによって翻弄され、やがて衝撃の結末へ。
ゾクゾク感とエーッ?ってなるのとが相俟って、ざわざわと心掻き乱される終幕。 (これって、金貨の偽造が伏線になってましたね。凄っごい違和感あったのにぃ!)
とにかく、ボーデンの著書もエンジャの日記も、自分の見せたいものだけを見せることに長けた奇術師に相応しいミスディレクションが仕掛けられていて、それぞれの瞬間移動の奥義に絡んで故意に重要な情報がぼかされているのです。 二人の奇術師の宿命的な確執とプライドをかけた意地の張り合いの連鎖にぐいぐい牽引されていく物語の力も凄かったし(この辺り、むかーし読んだアーチャーの「ケインとアベル」を思い起こしたなぁ)、なんといっても600ページに渡り、読者の意識を喚起し続ける種と仕掛けの構成力に酔いました。
存在の本質的なジレンマ、実際に目に見えていることは行われていないというマジックの法則・・といった隠喩的なイメージが派生し変奏し、秘かな暗示に満ちたテーマ性を醸し出していそうな気配。 掴み切れないのが心許無いのだけれど、こういう芳醇なもやもや感はイヤではありません。
電気の発明に沸いた時代、電気仕掛けのパフォーミングアートといった演出は、やはり当時の舞台の呼び物だったんでしょうか。 また、降霊会が真っ盛りだった時期でもあるんですね。 科学と超常現象が混沌と入り乱れている世紀末世界の隙間を縫うように奇術師たちは華々しく妖しく雄飛し、発明家のニコラ・テスラ(伝説多き実在の科学者でエジソンのライバル)はぶっ飛んだ奇才っぷりを発揮して、トリックと超科学が奏でる魅惑の物語を結実させています。


奇術師
クリストファー プリースト
早川書房 2004-02 (文庫)
関連作品いろいろ
★★
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